050208 高速増殖炉開発問題: 今後の議論の進め方について :柴山哲男氏の提案

 
足掛け10年間休止していた「もんじゅ」も、昨日地元福井県・敦賀市の了解が得られ、
いよいよ運転再開に向けて動き始めた模様で、今後一定の準備期間を経て一日も早く本
格軌道に乗るよう祈る次第です。一方、高速増殖炉開発問題に関する次期原子力長期計
画策定会議における議論は不十分ながらも一段落した感じですが、3月17日に第1回
口頭弁論が開かれる最高裁の審理の行方も絡み、本年末の長計確定まではまだまだ紆余
曲折があるものと予想されます。従って、当EEE会議としても、1月19日に公表
(「エネルギー問題に発言する会」の有志会員も併せ79名が署名)した「我が国の高速
増殖炉開発に関する緊急提言」のフォローアップとして、引き続き諸問題点についての
検討を着実に進めて行きたいと思います。上記の提言取り纏めで尽力された柴山哲男氏
からいただいた次のメールは、そのような趣旨で極めてタイムリーかつ適切な内容と存
じますので、これをご参考の上、今後のEEE会議での議論の進め方(重点の置き方)
について皆様の積極的なご発言を期待いたします。
--KK
 
****************************************************************
 
 
「もんじゅ」の改造工事着手が決まり、先の伊方のプルサーマル安全審査開始、
六ヶ所再処理施設のウラン試験開始などと合わせて核燃料サイクルが少しずつ動き始
めました。更にMOX燃料工場、中間貯蔵施設についても本年度中には見通しがつき
そうな状況です。今後成功したと言えるまでには多くの難関があると思いますが何と
か乗り越えて行ければと思います。
また、プルサーマル、中間貯蔵施設については
更に横に拡げて行く必要がありますが、着実に進めていけば拡がり得るのではないか
と考えています。
 あと燃料サイクル関連の主要な施設で残っているのは高レベル廃棄物の処分施設と
高速増殖炉開発の問題になります。高レベル廃棄物については昨年6月の「核燃料サ
イクル政策に関する提言」の議論の中で公募方式についての議論がありましたが、
声を上げる自治体も出始めており早い段階での進展を期待しております。これらの
問題に共通する課題としては「国の政策に関して地方自治体はどのように関与すべきか」
というものであり、EEE会議でも多方面の方に議論して頂ければと思います。

 これに対して高速増殖炉の開発については未だ国の方針を明確に打ち出すにはい
たっていません。先の長期計画策定会議の中でも結論を先送りしたような結果に終
わっています。長期計画取り纏めの最終段階までには再度議論の機会が得られること
を期待しています。確かに難しい問題ではあり、本年1月のEEE会議の提言の中で
も議論を行いましたが、提出時期を急いだこともあり、若干中途半端のままで終わっ
た感じも否めません。機会があれば一回の提言に終わることなく更に議論を進めて頂
ければと思います。
 提言には含めましたが、まだ議論が不十分と考えている点としては、@(総論)高速
増殖炉の必要時期と実証炉の建設時期など全体の開発ステップをどのように考えるべ
きか、A(経済性)高速増殖炉の経済性をどう考えるべきか、B(技術開発)JNCの
実施している実用化戦略調査研究の評価と今後の設計をどう進めるべきか、C(官民
分担)高速増殖炉開発、実証炉建設に当たり国と民間の負担、体制などをどう考える
べきか、D(国際協力)高速増殖炉開発における国際協力の考え方はどうあるべきか 
等があります。あまり急ぐ必要もないと思いますので、じっくり議論して頂き、その
結果まとまるようであれば再度提言として纏めても良いと考えています。

柴山 哲男
shibayama@mvh.biglobe.ne.jp