◆美浜事故から半年: 信頼回復へ道のり遠く 
 
  (読売新聞福井県版 2月9日)


 五人が死亡、六人が重軽傷を負った関西電力美浜原発3号機(美浜町丹生)の配管破損事故から、九日で半年が経過した。関電は美浜町の全戸を訪問し、原子力事業本部の県内移転を表明するなど信頼回復に必死だが、その後もトラブルが続き、道半ば。同機のような運転開始から長期間がたった古い原発の安全対策も検討が始まったばかりで、刑事責任の追及を含め、事故が突きつけたさまざまな課題の克服は、まだ時間を要しそうだ。
◇ずさんな管理◇
 昨年十一月下旬から約一か月、関電の技術系社員らが美浜町内の約三千七百戸を訪ね、事故の経緯や対策を説明した。「外に出る機会が少ない社員にも、安全に対する地域の思いを肌で感じてほしかった」と三戸洋一美浜発電所長は話す。
 しかし、事故後、法令を独自解釈して配管余寿命を長く見積もっていたことなど、関電のずさんな安全管理の実態が次々判明した。
 「遺憾を通り越して情けない」。四日、同じ発電所にある美浜1号機の湿分分離加熱器で水漏れが起きた際には、県は藤谷堯・関電若狭支社長を呼び、異例の厳しい言い回しで注意した。
 同加熱器周辺では一月下旬にも蒸気漏れがあったばかりで、トラブル自体は軽微なものの、目配りの不十分さがうかがわれたからだ。
◇高経年化対策◇
 事故は原発の老朽化対策の必要性を再認識させた。西川知事は、破損した配管が運転開始から二十八年間一度も点検されなかったことを重視。「背景には高経年化の問題がある」として、経済産業省原子力安全・保安院に対し、老朽原発の安全対策の充実、強化を強く求めた。
 保安院は昨年十二月、対策のマニュアル化を進める高経年化対策室を設置。経産相の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」の原子力安全・保安部会にも高経年化対策検討委員会も設け、三月にも中間報告をまとめる方針だ。
 だが、市民団体「若狭連帯行動ネットワーク」メンバーの松下照幸・美浜町議は「高経年化対策と言っても多岐にわたり、電力自由化でコスト削減を迫られている電力会社がどこまで取り組むか疑問。国もポーズで終わるのでは」と懸念する。
◇原因究明◇
 国の事故調査委員会は昨年九月の中間報告で、「関電の品質保証、保守管理が機能していなかった」と厳しく指弾。三月末までに、事故を招いた背景などについて最終報告をまとめる方針だ。
 一方、業務上過失致死傷容疑で立件を目指す県警捜査本部(敦賀署)は、関電若狭支社や本社直轄の計算センターなどを捜索し、検査記録など大量の資料を押収した。メーカーの三菱重工や保安院にも捜査員を派遣し、刑事責任の追及に向けて捜査を進めている。