◆核製造・6か国協議参加は無期限中断…北朝鮮が声明

   (読売新聞 2005/2/10/23:35) 
 
 【ソウル=豊浦潤一】朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省は10日、同国の核問題に関する6か国協議について、米ブッシュ政権が北朝鮮への「敵視政策」を変えず、日本もこれに追随しているとして、「参加を無期限中断する」との声明を発表した。
 声明はさらに、「我々は自衛のために核兵器を製造した」として、これまで「核抑止力」などの表現で示唆していた核保有を初めて公式に表明。今後も「核兵器庫を増やすための対策を講じる」とした。
 核問題解決の枠組みが暗礁に乗り上げたことで、米国が今後、国連安全保障理事会での討議を求めることも予想される。拉致問題で北朝鮮への世論が硬化している日本でも、経済制裁を求める声がいっそう高まりそうだ。
 6か国協議は昨年6月に第3回協議が開催された後中断状態で、北朝鮮は2期目のブッシュ政権の出方を見守る姿勢を見せていた。
 ブッシュ大統領が就任演説で、「世界の圧政を終わらせる」などと述べたことから、北朝鮮は、米国が金正日(キム・ジョンイル)政権を否定的にとらえ、完全核放棄を求めていく姿勢に変化がないと判断。次回6か国協議に参加すれば核放棄の決断を迫られる展開になるとみて、不参加表明に踏み切ったと見られる。
 外務省声明は、ライス米国務長官が議会での指名承認公聴会で北朝鮮を「圧政の前線基地」と指弾したことにも触れ、「第2期ブッシュ政権の本心は、対朝鮮孤立・圧殺政策をさらに強化すること」と指摘した。
 また、日本政府が、拉致被害者の横田めぐみさんをめぐり、北朝鮮が別人の骨を「遺骨」として提出したことに抗議したことを念頭に、日本が「すべて解決した拉致問題に言いがかりをつけ、偽遺骨問題まででっち上げ」たと非難。「日朝平壌宣言を白紙に戻し、国交正常化をしないという日本と、いかにして一堂に会して会談を行えるか」として、日本の姿勢も協議不参加の一因にあげた。
 ただ、声明は協議不参加について「会談の結果を期待できる十分な条件と雰囲気がもたらされたと認められる時まで」と条件を付けたほか、「対話と協議を通じて解決しようとする原則的立場には変わりがない」とし、将来の協議再開の道までは閉ざさなかった。
 米中央情報局(CIA)はこれまで、北朝鮮が1、2個のプルトニウム型核爆弾を保有している可能性を指摘。北朝鮮の李根(リ・グン)外務省米州局副局長は、2003年4月の北京での米中朝3か国協議で、米国代表団に非公式に、核保有を認める発言をしていた。
 
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◆北朝鮮、6者協議参加を無期限中断 核兵器製造も宣言

  (朝日新聞 2005/2/10 23:24)

 北朝鮮外務省は10日、声明を発表し、第2期ブッシュ米政権が敵視政策を変えていないとして、「6者協議への参加を無期限、中断する」と表明した。また、「自衛のために核兵器を製造した」と明言、核兵器の製造・保有を初めて公式に宣言した。北朝鮮側には米国との個別交渉を有利に運ぼうとする意図があるとみられるが、この声明により、日米中韓ロ5カ国が目指している核問題解決のための同協議の早期再開は不透明な情勢になった。
 北朝鮮の国営朝鮮中央通信が声明を報じた。第2期ブッシュ政権が発足して以降、6者協議に対する初の態度表明。核兵器について北朝鮮はこれまでも製造・保有を示唆する発言を繰り返したが、外務省声明で公式に明示したのは初めて。
 声明は、ライス米国務長官が就任する前の1月、世界の「圧制の拠点」の一つとしてキューバやミャンマー(ビルマ)などとともに北朝鮮を名指ししたことに関連し、「ブッシュ政権が(北朝鮮に)『圧制の拠点』との烙印(らくいん)を押した以上、再び6者協議に臨むいかなる名分もない」と非難。「協議の結果を期待できる十分な条件と雰囲気がもたらされたと認められる時まで、6者協議への参加を無期限中断する」と表明した。
 声明はただ、「対話と交渉を通じて問題を解決しようとする我々の原則的な立場には変わりはない」とも述べ、条件次第では6者協議に復帰する含みを持たせた。
 また、声明は「米国が核のこん棒を振り回して我が制度を抹殺する企図を明白にした以上、人民が選択した思想と制度、自由と民主主義を守るため核兵器庫を増やす対策をとる」と表明。「我々は既に、自衛のために核兵器を製造した」と言明した。
 さらに日本について声明は「既に解決した拉致問題にかこつけてニセ遺骨問題まで捏造(ねつぞう)し、平壌宣言を白紙に戻し、国交正常化をしないという日本と、どうして一堂に会して会談を行えるか」と批判した。