050219  Re:高速増殖炉開発問題: 今後の議論の進め方について)  豊田正敏氏⇔柴山哲男氏


標記メール(2/17 豊田正敏氏)に対し柴山哲男氏からつぎのようなコメントをいただきました。ご参考まで。 なお、この同氏のコメントは、昨日開かれたEEE会議タスクフォース(作業部会)で多くの出席者から述べられた意見を反映するものであると思います。--KK
 
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 追加検討メモに対する豊田正敏氏のコメント(2/17)に対して下記の通り意見を述べさせて頂きます。
 
1 高速増殖炉は発電の他に増殖を行える点に意義がある。従って軽水炉の次世代の炉(一部併用期間はあるが)として位置づけられるもので軽水炉と競合して導入されるものではない。経済性はもっとも重要な要素ではあるが、前提条件によっても異なり、経済性のみで判断されるものではない。経済性の見通しが全く立たない場合は別として、経済性の見通しが得られなければ放棄して良いものかどうかは疑問がある。
 
2 ウラン資源については当面問題ないとする意見もあるが、今後の中国、インドを始めとする東南アジア諸国の原子力発電量の増加により需給が逼迫するという見方もある。高速増殖炉が実際に実用化される段階はその時点におけるウラン価格などによって判断すれば良いが、危機管理上は最悪の事態に備えて実用化可能な段階までの開発は進めておくべきである。
 
3 電気事業者等が実際に高速増殖炉を導入する時点では経済性が大きな要因となる。その意味では経済性、安全性、信頼性、核拡散抵抗性の見通しが得られなければ導入できないと言うことは当然である。しかし、今議論をしようとしていることは、どうすれば上記の条件を満足する高速増殖炉の開発ができるかどうかと言うことである。見通しが得られるまでは議論しても無意味というのではなく、どうすれば見通しが得られるかという点に関して積極的な御提案を頂きたい。
 
4 経済性もそうであるが、安全性、信頼性などについては、紙の上だけでなく実際に炉を建設、運転して初めて実証される。その意味でも実証炉の建設、運転により実用化の見通しをつけておくことは重要である。実証炉の建設に際しては設計段階で十分な検証を行い、技術的、経済的な見通しを得た上で着工すべきことは当然であるが、その基準については実用炉までを見通した上で規模、仕様、経済性などについて適切な目標を設定する必要がある。
 
柴山 哲男
shibayama@mvh.biglobe.ne.jp


--------------Original Message---------------
From: Kumao Kaneko [mailto:kkaneko@eagle.ocn.ne.jp]
Sent: Thursday, February 17, 2005 9:56 PM
To: Undisclosed-Recipient:;@m-kg202p.ocn.ne.jp;
Subject: EEE会議 (Re:高速増殖炉開発問題: 今後の議論の進め方について)柴山哲男氏⇔豊田正敏氏
 
皆様
 
標記メール(2/17 柴山哲男氏)でお届けした「追加検討項目(メモ)」に関し、豊田正敏氏から次のようなコメントをいただきました。ご参考まで。
 
なお、右の「追加検討項目」は、すでにお断りしましたように、あくまでも検討項目のチェッエクリストであって、明日のタスクフォース会議での議論のご参考として用意されたものです。豊田氏の下記コメントについては、小生としても若干申し上げたきことがありますが、明日の会合の際にまとめて申し上げることにいたします。
--KK
 
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柴山氏の提起されている「高速増殖炉開発に関連して討議・検討が必要と考えられる項目」に対して簡潔に以下のようにコメントします。

1 (総論)高速増殖炉の必要時期と実証炉の建設時期など全体の開発ステップをどのように考えるべきか
 高速増殖炉の必要時期は実用化できるのであれば早いに越したことはないが、当初の計画より大幅に遅れ動燃が技術開発を開始してから40年経った現在、未だ、その見通しが得られない現状である。従って、現状を的確に把握することが先決であり、「高速増殖炉の必要時期や実証炉の建設時期」などを議論しても無意味である。
長期計画策定委員会で「将来の進め方については2015年頃までに検討する」ということも、私及び何人かの人が指摘しているように、実証炉のプラントの詳細設計を2015年までに終え、それに基づき、原子炉メーカーの見積もりを徴収して経済性の見通しがあるかどうかを判定すべきである。ただ漫然と期限も切らずに、技術開発をしていて時間と資金を浪費することは許されないと考える。もし、2015年までに経済性の見通しが得られない場合には、他の次世代原子炉型式の技術開発に転換すべきである。

2 (経済性)高速増殖炉の経済性をどう考えるべきか
 ウラン資源は今世紀中需給が逼迫することはなく、200ドル/kgUを超えることはないと考えられている。また、電力自由化を迎えている。従って、軽水炉と同等の経済性、安全性、信頼性(稼働率を含む)及び核拡散抵抗性などが得られる見通しが得られなければ誰も資金を出すことは期待できず、実証炉に進むことは出来ないであろう。
実証炉については、建設費のみでなく、燃料サイクル費、運転維持費及び稼働率を考慮して経済性が軽水炉並になることが必要である。経済性の見通しが得られなくても実証炉を建設しろという暴論は、原子力委員会始め関係官庁も認めないことは明らかである。
 
3 (技術開発)JNCの実施している実用化戦略調査研究の評価と今後の設計をどう進めるべきか
「実用化戦略調査研究の評価今後の設計をどう進めるべきか」については、JNCとは別個に専門的立場で検討すべきであるが、EEE会議で十分専門的議論をするためには、高速増殖炉の技術的専門知識を有する人に取り纏めを依頼すべきである。柴山氏では適当とはいえない。
 
4 (官民分担)高速増殖炉開発、実証炉建設に当たり国と民間の負担、体制などをどう考えるべきか。
  電力自由化を迎えまた、原子炉メーカーの経営状況を考えると経済性の見通しも不透明であり、かつリスクの大きいものに民間からの資金協力は難しく、国の全額負担により、プラント及び燃料も国の所有にすべきである。
 国の体制よりも、実質的に技術開発及びプラントの設計、政策を担当するJNC及び原子炉メーカーの組織、体制をどうするかの方が重要である。以上