050221  中央アジアに非核地帯 旧ソ連から独立の5国署名
中央アジア非核地帯
中央アジア非核地帯

 旧ソ連の解体後に独立した中央アジア5カ国を非核地帯とする条約交渉がまとまり、世界最大規模の核実験場跡地を抱えるカザフスタンのセミパラチンスクで8月にも署名される。世界で5番目の非核地帯となる。98年の交渉開始から7年、核保有国の圧力などから交渉は難航したが、国連や日本政府などの支援を受けて合意に至った。

 97年にカザフスタン、タジキスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタンの5カ国の首脳が、冷戦期の旧ソ連による核実験で環境汚染の被害を受けたことから、非核地帯の必要性を表明。国連に条約締結の支援を求め、国連アジア太平洋平和軍縮センターが翌98年から、50回に及ぶ非公式会合や、日本の援助を受けて札幌やジュネーブなどで専門家会合を開いてきた。

 まとまった条約は18の条文と付属議定書で構成。核保有国が核搭載の航空機や船舶、車両などの非核地帯通過を可能にするよう働きかけるなどしたため交渉は難航した。通過を認めないことで収まったが、核保有国は議定書に署名する際、通過の権利を持つことを保留条件として記す可能性が残っている。禁止規定に違反しても罰則はない。

 このほか、条約案には当初、周辺国を新たに締約国に組み入れて非核地帯の拡大を可能とする条項が含まれていたが、核保有国の要求を受けてそれを削除するなど、一定の譲歩をした。

 8日にウズベキスタンの首都タシケントで5カ国の外務副大臣や外務次官らが仮署名した。同時に本署名の早期実施と条約運用にあたって世界各国の協力を求める共同声明で合意。17日にはニューヨークに5カ国の大使らが集まり、本署名の方針を再確認した。

 98年以来、交渉を仲介してきた国連アジア太平洋平和軍縮センターの石栗勉所長は「7年間はまさに信頼醸成の過程だった。5月に開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議を前に合意に至ったことで、世界の核不拡散体制の強化に良いインパクトを与えるだろう」と語った。

 〈非核地帯〉 核兵器の生産、取得、保有、管理を禁止。条約付属の議定書で米ロ英仏中の核保有国が地域内への核攻撃や核による脅しをしないことを誓約する。67年に署名された中南米核兵器禁止条約以来、85年に南太平洋、95年に東南アジア、96年にアフリカでそれぞれ条約が署名されたが、アフリカ非核地帯は批准国が少なく発効していない。

  (朝日新聞 2005/02/20)