050223  Re:「水素社会とは?」石井吉徳氏から):木村正彦氏のコメント

標記メール(2/22 石井吉徳氏)に関し、木村正彦氏から次のようなコメントが
寄せられました。ご参考まで。水素エネルギー問題の専門家各位からのコメ
ントやご教示を歓迎します。
--KK
 
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 お早うございます。水素エネルギーについて、一言
申しあげます。

 2月1日(火)の鞄本原子力情報センター主催の
新春講演会の最後の講演者の(財)エネルギー総合
工学研究所の松井一秋理事様のご講演後の質疑応答の
時間でも若干触れましたが、水素には、従来の「電気」
にはない大きな3つの利点があるということです。
 @貯蔵ができること
 A原料は無尽蔵にあること(水の電気分解により入手
  の場合)
 B発電後、CO2・灰(アッシュ)・放射性廃棄物を
  基本的には出さないこと

 まだまだ水素エネルギーには色々と、技術的な課題が
ありますが、以上の3つの長所は、他の発電システムには
ないシステムであると私は今のところ思っています。
ですから、「燃料電池」を常に私はマークしております
(ただ、自分自身では、直接研究開発できず、情報入手
のみですが…)。
 また、私は、水素を握るものが、21世紀のエネルギー界を
握るとも思っています(盲信かもしれませんが…(笑))。

 燃料電池のような分散型電源が、現在の『発電−送電−
変電−配電』といった電気事業システムを切り崩す先兵に
なると思い、警戒もしています。
 約2年後になるであろう電力完全自由化では、電力地図を
大きく塗り替える可能性を十分秘めていると考えます。ですから、
ガス業界の方々を初め、色々な業界の方が“燃料電池”(水素
改質など)を真剣に研究開発なさっていらっしゃいます。
 私は、土建分野が専門ですので、細かいことはわかりませんが、
電力業界が燃料電池の研究をNEDO様などの外部頼みの感じが
するのは、ちょっと気がかりです。

 水の電気分解・水素の生成のために、「太陽電池」・「風力
発電」・「潮汐発電」など、低効率で設備価格が高くて商業
ベースに現在乗らない“自然エネルギー発電”が浮上して
日の目を見る機会になってくると考えます。

 この辺の貴重な情報・意見がございましたら、是非お教え
下さい。多分、「メシの種」になりますので、誰も本音は
おしゃらないとは思いますが…。

 今後ともよろしくお願い申しあげます。


-----------------------Original Message-----------------------

> 皆様
>
> 石井吉徳氏から次のようなメールをいただきましたので、添付ファイルと共に転送いた
> します。ご参考まで。
> なお、この情報に関連して何かコメントなり関連情報等のある方はどうぞ。
> --KK
>
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>
>
> 先に内輪のフォーラムで、下記を発信したところ、反響が大きいので広く各位にも転送
> します、ご参考まで。--石井吉徳
>
> -------------------------------------------
> 各位
> 日本で今水素エネルギーが大流行です。あたかも水素社会で人類は安泰と言わんばか
> り、もう水素でないと予算がつかないほどです。
>
> この水素社会の考えは、元々アイスランドで地熱利用でスタートしたものです。アイス
> ランドは海底が裂けつつある火山活動の真上に位置する国です。この人口も少ない小島
> でProfessor Hydrogenと称される化学者が、水素社会を推進しました。アイスランドで
> はうまく行ったようですが、それは自然エネルギーが豊富だからです。それがヨーロッ
> パに、そして日本に広まったようです。
>
> この意味を考えないで、水素は二酸化炭素を出さない「究極のエネルギー源」と言う人
> が多いようです。水素と燃料電池が組み合わせるハイテク性に、人々が飛びついた、今
> では水素はクリーン、未来技術の代名詞とすらなった?日本の故小渕総理もアイスラン
> ドを訪問、或いは訪問させられたようです。頭の良い人たちがいたのでしょう。
>
> ですが、さすがに最近、良識が戻ってきたようです。アメリカでも[The Hype about
> Hydrogen]という、元クリントン政権時代に水素を推進した中心人物による本が出てい
> ます。これすら短期、中期に見ても水素は時期尚早と言うのです。
>
> 本メールに、いくつかの添付ファイルを付けました。そのうちのワールドウオッチう
> WWIのものは、アイスランドでの経緯を書いているので添付しました。これは推進派の
> 典型です。それ以外は水素、水素社会の本質について語っています。
> 先ず水素はエネルギー源ではない。「自然エネルギーから」は意味はあるが、「化石燃
> 料から水素」はやってはいけない。
> 次いで、エネルギー変換は必ず損失が伴う、徒に水素にしてはいけない、自然エネルギ
> ーで発電した電気はそのまま使う、バイオマスからのメタンもそのまま燃料とするのが
> 良いというのです。
>
> 特に運輸用は、水素ではなくエタノールなどの常温で流体が望ましい、現代の社会イン
> フラをそのまま利用できるからです。また「水素と燃料電池の組み合わせ」の総合効率
> は、今のハイブリッド車と同程度だそうです。車、船、航空機用の燃料、そして現在の
> 既存の燃料供給システムなど、現代社会のインフラを捨てないですむ。これからの石油
> 減耗、石油ピーク時代、そのような浪費、無駄をする余裕などない筈です。
>
> 「水素の元素としての性質」もよく理解する必要がある。元素としての水素利用の問題
> は技術以前のこと、燃料電池も慎重にと言います。日本の国研、そして大学も水素の本
> 質、意味を真剣に考えて欲しいと思います。
>
> 最近、日本学術会議が1次、2次の科学技術基本計画に沿った研究が、欧米に較べ効率
> が悪いと批判しました。その報告全文は次のHPで見られます。
>
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-te1022-2.pdf
> また読売新聞も関連記事を出しました。
>
> 以上、ご参考まで。
> ----------------------------------
>
> 石井 吉徳
> 東京大学名誉教授
> 富山国際大学教授