050224  原子力国際戦略研究会 第2回会合(2/18)の議事概要


先日(2/18)開催した原子力国際問題研究会改め「原子力国際戦略研究会」の第2回会合の議事メモをご参考までに配信します。このメモは小川博巳、松永一郎両氏がまとめてくださったものですが、その他の出席者の修正意見も取り入れてあります。次回(2/25、水町渉氏の講演・研究会のあと引き続き開催)で続きの議論を行なう予定ですので、できるだけ事前にお目通しおき下さい。当日出席されなかった方々からもコメントを歓迎します。
--KK

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第2回 EEE会議原子力国際問題研究会 議事メモ

 

日時:  200521815301600時 (NUPEC会議室にて)

出席者: 山名康裕、天野 治、田中義具、吉田康彦、石井 亨、白山新平、奥出克弘、柴山哲男、小山謹二、林 勉、笛木謙介、益田恭尚、池亀 亮、辻万亀雄、斉藤 修、金子熊夫、

小川博巳、松永一郎(敬称略、順不同)

配布資料:原子力国際問題研究会 1回会合(1/28)議事概要(メモ)

     「原子力国際協力に関する提言」のための論点

     「原子力国際問題の現状と日本の課題」(町末男原子力委員の講演資料2/18

主な議論:

(1)基本的な考え方・方針

    「国際協力」というと、開発途上国への無償の技術協力・指導が中心と捉えられがちであり、しかも従来我が国の政府レベルの原子力国際協力は、核不拡散の観点から、原子力発電は避け、RI,放射線利用が主体で、原子力発電は基礎研究や安全性問題などに限定されてきたが、今後は原子力発電問題、とくに原子力プラント輸出問題を中心に考えるべきだ。その意味で、我々の研究会ははっきり「原子力輸出問題研究会」あるいは「原子力国際戦略研究会」と称した方がよいかもしれない。

    しかしながら、我国の原子力プラント輸出は、私企業のビジネスだ・金儲けだとの認識が大方のようである。国もメーカの片棒を担ぐのはマッピラだとの認識のようだ。確かに国内市場が伸び悩んでいる現状では、日本の原子力技術(者)を維持するためにも海外展開が必要というビジネス的な動機はある。しかし、そうしたことよりもっと大事なことは、これから発展するアジアの原子力市場に対して欧米先進国(フランス、イギリス、ロシアなど核兵器国が中心)が積極的に進出しているときに我が国だけが拱手傍観するのではなく、唯一の被爆国として非核に徹し、世界で最も厳格な核不拡散政策(保障措置)を採っている日本から安全で効率的な原子力プラントを輸出することこそが、単に日本の利益というより国際的な核拡散防止、NPT体制の維持の観点から極めて重要であるとの認識に切り替えるべきである。このことを政府(原子力委・外務省・経産省)や国会を初め、国内世論に強くアッピールする必要がある。

    日本のお膝元である東南アジアで、日本抜きでフランスやロシア産の原子炉が作られ発電活動が始まったら何が行われるのかわからなくなる。日本は「つんぼ桟敷」におかれ、万一これらの国で重大な原子力事故があっても日本として十分な緊急援助は出来ない。もしアジアで大事故が起こったら直接多大な影響が及ぶのは日本だ。従って日本からのプラント輸出により、安全で平和な(拡散の惧れのない)原子力発電を東南アジアに根付かせることは日本にとっても必要と考えるべきである。

     

(2)研究会の進め方・作業スケジュール

    原子力委員会・長計策定会議でも原子力国際問題については重視し、専門の作業部会を立上げるようだが、原子力国際問題は重要なテーマで、腰をすえて検討するべきであるので、EEE会議での検討作業は長計策定会議の至近の審議日程と必ずしも合わせる必要はない。

ただし、我が国がどのような原子力国際戦略を展開するかはNPT体制の問題とも密接に絡

  むので、5月2日からのNPT再検討会議に向けて、それに焦点を絞った具体的な提言をま

  とめるのは意味がある。そのためには3月中にも一定の意見をまとめることが望ましい。

    原子力委員会のほかに、原子力産業会議主宰の原子力国際展開懇話会でも、プラント輸出に関連する課題を検討している模様なので、その関係者を招待して話を聞くなどして相互啓発、切磋琢磨するのは有意義だ。

    EEE会議では2〜3月に、アジア問題(2/18町末男原子力委員)、日米関係(2/21シャインマン教授)、インド問題(3/9 木村逸郎教授)、中国・韓国(3/17 永崎隆雄氏)、ベトナム問題(日時・講師未定)など具体的な検討を予定している。外務省、経産省のほか、メーカからも専門家を呼んで話を聞きたい。

     

(3)NPT関連問題

・ NPT体制には、元々ダブルスタンダードの要素があるが、日本政府の米国、インドに向けた対応にはかなりの温度差があるので(米国に甘く、インドに厳しい)、この際インドに焦点を絞ったケース・スタデイをすれば、NPTの問題点がより明確に見えてこよう。外務省は触れたくなかろうが、この点を明らかにすることが必要だろう。

    中国(1964)とインドの核実験(1974)の時間のズレが、両国の差別の分岐点になっているが、ODA支援に於ける我国の扱いでも、明白な差別がある(インドに対してはODA大綱を厳格に適用している)NPTとは何か、何のためのものか考え直すべきだ。

    NPTのダブルスタンダードについては、米国にも直言をするべきだ。将来米国の「核の傘」が不要な北東アジア非核地帯か東アジア共同体を目指すためには、米国のパートナーである日本は、CTBTの批准・核軍縮を米国に迫らなければならない立場にある。

    IAEAにはパキスタン・インドも積極的に参加している。偏見を捨て、ファクトを正しく認識することが原点であるべきだ。 WANOの経験からもそれが言える。日本政府主導のFNCA(アジア原子力協力フォーラム)ではインド、パキスタンを最初から除外しているが、これでよいのか。もっとも、インドとパキスタンを同等に扱うか区別するか、インドだけと原子力協力を進めるとするとどう説明したらよいか、その辺の理論構成をよく考えておく必要がある。

    インド・ベトナムなどの原子力の実態を我々は正しく認識すべきだ。米国は夙にインドとの協力関係を強化しているが、日本はNPTを口実にして視察すらしていない。EEE会議の有志でインド・ベトナム視察団を企画したらどうか。

    当面5月のNPT再検討会議へ向けた提言が、我々の課題だ。マスコミを利用するべきだ。

「提言に向けた論点」を拠り所に、更に議論を深めたい。

京都議定書のCDMと原子力問題についても世論を啓蒙する必要があり、なるべく早く議  論を詰めたい。   以 上 

 

(小川博巳/松永一郎氏のメモによる)