050224  Re: 「水素社会とは?」 石井吉徳氏から) : 益田恭尚氏のコメント

石井吉徳氏が提起された水素エネルギー問題につきましては、その後色々な方々からコメントをいただきましたところ、木村正彦氏のコメント(2/23)及びこれに対する匿名希望氏のご批判(2/23)に関連し、益田恭尚氏からも次のようなコメントをいただきました。色々なコメントや反論が若干錯綜しいるようですが、益田氏のメールのお陰でその辺が整理されたのではないかと思います。ご参考まで。
--KK
 
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2/23付けの木村正彦氏のコメントを見て、私も匿名氏の
「今回の木村様のコメント(2/23)は、失礼な言い方になりますが、水素に対する誤解の典型的な例と思われます。EEE会議の会員ですら、このような認識がまだ残っていることに、ややがっくりしたというのが正直な感想です。」
と同様な感想を持ち、いかに不正確なマスコミの報道が世を毒するかを感じました。しかし私が説明する立場でもありませんし、他のEEE会員は十分ご存知のことと思いそのままにしておりました。
匿名氏は地位と責任のある現役の方で詳細説明を躊躇されたのだと思います。
しかし、それに続く木村様の
これでは、ただの「ケチ」だと考えます。・・・水素の危険性など、色々と「水素」自体に非常に問題があると思います。・・・化石燃料からの水素改質では、燃焼で出る二酸化炭素が出ないだけで、資源問題の本質的な解決にはなりません。・・・しかし、以上な致命的な技術的課題を何もせずに「ダメ」だからと尻込みしていたら埒があきません。それを乗り越えてこそ、本当の技術開発であり、真の勝利者になれると確信しています。また、広く会員の方々の聡明なご意見を頂戴できれば、幸いです。ただ、理由・代替案なき反対は、単なる『ケチ』ですので、配信はお止め下さい。時間の無駄ですし、議論の余地もありません。」
をみて、何もお忙しい石井先生を煩わさなくとも、私の知識の範囲で木村様に説明しておいた方がよいと考え、一文を呈する次第です。
先ず
A原料は無尽蔵にあること(水の電気分解により入手の場合)
これは水素推進の新聞記事などにも良く書いてある表現です。しかしエネルギーの場合は原料自体がエネルギーを持っていない限り、原料があるからエネルギーがいくらでも得られると考えるのは大きな間違いです。水素は酸素と化合する時大きなエネルギーを出します。逆に考えれば水を分解し水素を得ようとすればそれ以上の膨大なエネルギーを必要とします。分解するためには電気分解の他、熱の利用も可能です。石井先生が何時もおっしゃっているEPRで考えると、水素を発生させるのはエネルギー比(EPR)は1以下になってしまうのです。( EPR=出力エネルギー/入力エネルギー)
@貯蔵ができること
電気が貯蔵できないことは利用上大きな問題です。発電設備の有効活用、必要な時の利用のためには貯蔵が必要です。このために揚水発電、リチュウームイオン電池、ニッケル水素電池等が開発され実用化されています。水素も電力の貯蔵の有力な候補であります。しかし、貯蔵はあくまでも変換したエネルギーを捨てないで貯蔵しようというもので、新しくエネルギーが得られるものではありません。貯蔵する際損失があること(利子はつきません!)、大きな設備が必要なことも忘れてはなりません。立地の問題、輸送の問題等評価は難しいのですが、水素がこの点で前記の貯蔵法に比べ優位だとはいいきれません。
 
B発電後、CO2・灰(アッシュ)・放射性廃棄物を基本的には出さないこと
一度水素にしてしまえば確かにご指摘の通りです。しかし水素をどうやって作るのかを考えてみると、その過程で二酸化炭素や放射性廃棄物を発生し、全体を通じて水素が優位だとはとてもいえません。
 
次にご指摘の「太陽電池」・「風力発電」・「潮汐発電」など、低効率で設備価格が高くて商業ベースに現在乗らない“自然エネルギー発電”が浮上して日の目を見る機会になってくると考えます。」というのはどのようなことをお考えになった上の判断でしょうか。一般に発電したらそのまま電力として消費するのが一番有利です。アマゾンの大水力発電所を設置したり、砂漠に大太陽光発電機を設置した場合、送電するより水素にして輸送した方が有利という説を唱える人もいるようです。その場合、綿密な経済比較が必要です。(パイプラインと高圧線とどちらが有利か?)
「電力業界が燃料電池の研究をNEDO様などの外部頼みの感じがするのは、ちょっと気がかりです。」というのも電力会社ご出身としてはちょっと気がかりです。(かって)東京電力で大発電施設まで作り実証試験が実施されました。他電力もなにかしらやっておられるはずです。
 
それでは何故米国をはじめわが国でも水素利用が叫ばれ、大々的な実証試験が進められているのでしょうか?
私もその根拠を伺いたいと思っております。
私が勝手に推測すると下記ではないかと考えております。関係者のご意見を頂ければ幸甚です。
水素利用はやはり自動車を措いては考えられないのではないのでしょうか。(自動車利用が軌道に乗れば他の分野での利用も進むでしょうが)
自動車燃料について現在抱えている課題は下記の2点でしょう。
1.今の自動車は都市の中で公害を撒き散らしながら走っているが、水素自動車なら少なくとも自動車が公害を出さないため、利用制限がなくなる。
2.自動車の燃費の向上は常に心掛ける必要がある。ガソリンと電気を組み合わせたハイブリットカーはその一つであり相当の燃費向上が可能であることが実証されつつある。(まだまだ初期投資が高いが!)その意味で(ガソリン改質の水素でも)燃料電池を使った電気自動車はガソリンエンジンよりも燃費がよくなる可能性が高い。
3.近い将来石油が不足した場合自動車の燃料はどうするか。
「・・・化石燃料からの水素改質では、燃焼で出る二酸化炭素が出ないだけで(改質に際し二酸化炭素が発生しますよ!資源問題の本質的な解決にはなりません。・・・」と言っておられるように、将来は原子力(または再生可能エネルギー)で作った電気か、原子力の熱と電気を利用して作った水素で電気自動車または燃料電池車を動かすのが有効な手段として考えられる。
そのためには水素利用の手段としても、水素スタンドをはじめ相等大掛かりなインフラ整備が必要である。石油がなくなって急にスタートしても間に合わないので、余力があるうちに準備しておく必要がある。
 
EEE会議の情報やホームページの情報から相当量の知識が得られます。もう少しお調べになることをお勧めします。
追記:本文は「エネルギー問題に発言する会」のホームページに転載させていただく予定です。
 
益田恭尚
藤沢市辻堂4-9-53
takmasudajp@ybb.ne.jp
 
 
 
----- Original Message -----
From: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>
Sent: Thursday, February 24, 2005 12:56 AM
Subject: EEE会議(Re: 「水素社会とは?」  石井吉徳氏から) : 木村正彦氏のコメントへのコメント

> 皆様
>
> 今回の木村様のコメント(2/23)は、失礼な言い方になりますが、水素に対する
> 誤解の典型的な例と思われます。
> EEE会議の会員ですら、このような認識がまだ残っていることに、やや
> がっくりしたというのが正直な感想です。
>
> 木村様のコメントの何が誤解であるのか、石井先生のようなお詳しい
> 方からご指摘いただき、まずは少なくともEEE会議の中からだけでも、
> 正しい認識を広めていく必要があると思いました。
>
> 自分では何もしないでお願いするだけで恐縮です。
>
>      匿名希望
>
 
 
----- Original Message -----
From: Kumao KANEKO
To: Undisclosed-Recipient:;
Sent: Wednesday, February 23, 2005 9:37 AM
Subject: EEE会議(Re: 「水素社会とは?」  石井吉徳氏から) : 木村正彦氏のコメント

皆様
 
標記メール(2/22 石井吉徳氏)に関し、木村正彦氏から次のようなコメントが
寄せられました。ご参考まで。水素エネルギー問題の専門家各位からのコメ
ントやご教示を歓迎します。
--KK