◆もんじゅで水素製造の研究開始

     (朝日新聞福井県版 2005/2/24)
 
高速炉で水素を製造する構想をPRする核燃機構のチラシ
 来月から高速増殖原型炉「もんじゅ」(敦賀市)の改造工事の準備に着手する核燃機構は、「もんじゅ」や高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の有用性を高めようと、高速炉の熱を利用して燃料電池のもとになる水素をつくる研究を進めている。「もんじゅ」に反対する敦賀市民からは「安全性がはっきりしていないもんじゅで、また危ないもの(水素)をつくろうというのか」と反発の声も出ている。
(鵜飼真)


核燃機構 有用性アピール
 
 水から水素を化学的につくるためには製造過程で高熱が必要で、国内では10月に核燃機構と統合する日本原子力研究所が、1千度近い高熱が出る原子炉「高温ガス炉」の熱利用による製造を研究している。

 核燃機構は大洗工学センターで、常陽やもんじゅの1次系ナトリウム原子炉容器出口で発生するそれぞれ500度、530度の熱で水素をつくる技術開発に取り組んでいる。

 研究では、熱分解や電気分解で水を水素にする製造法を採用。水素をつくる過程で必要な三酸化硫黄の分解には約800度必要とされたが、同センターは化学反応を早めるセラミック素材を触媒として使用する方式を考案し、昨年6月、550度で5時間連続製造する実験に成功し、特許を出願している。さらに温度を下げる方法などを研究し、実用化をめざすという。

 もんじゅは、燃やした以上のプルトニウムを増殖しながら、発電することが目的の研究開発炉で、常陽はその前段の実験炉。水素はあくまで副産物としてできる。核燃機構は茨城県ではチラシなどで「高速炉を使って電気と水素を製造」「水素を製造する高速炉」などと高速炉の有用性をアピールしている。

 95年12月のナトリウム漏れ事故で運転を停止しているもんじゅは3月から8月末まで照明器具の撤去や仮設電源の設置、壁の穴あけ、扉・ハッチの改造など、改造の準備工事をし、9月から07年1月まで2次冷却系温度計の交換、ナトリウム漏洩(ろうえい)に対する改善などの本格工事をする。運転再開は早ければ08年2月からになり、約10年かけて基本性能を確かめる方針だ。水素製造試験の実施はその後になる。核燃機構の柳沢務・敦賀本部長代理は「燃料電池や自動車の燃料など、将来のエネルギー源として重要な水素を造る役割は大きいはずだ」と話す。

敦賀市民「また危ないもの」と批判

 一方、もんじゅ行政訴訟の原告の一人で、「高速増殖炉など建設に反対する敦賀市民の会」代表委員の吉村清さん(79)は「もんじゅを生き残らせるためなら、何でもかんでもやってやろうという姿勢がみえる。10年後には、水素をつくるもっといい方法ができているのではないか。もんじゅに多額の金をつぎ込んで水素をつくらなくてもいい」と批判している。