050225  Re: 「水素社会とは?」 石井吉徳氏から) : 石井陽一郎氏(最近の水素論について思うこと

石井吉徳氏の標記メール(2/22)がきっかけとなってこのところ、水素エネルギー論が再燃しておりますが、石井陽一郎氏からも次のようなコメントをいただきました。ご参考まで。 ちなみに、EPR(energy profit ratio)の考え方については、石井吉徳氏のEEE会議でのご講演(04/11/18)で詳しく解説されましたが、HP(http://www.eeecom.jp/)の「最新情報」欄に同講演のビデオ完全記録が載っておりますので、この機会に是非ご覧下さい。

--KK

 

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      最近の水素論について思うこと

  ―原子力のいっそうの利用効果を高めるー         05,2,26

                                石井陽一郎

1、はじめに

堀 雅夫氏の「水素エネルギー」、最近の石井吉徳先生の水素問題提起、内田裕久氏、木村正彦氏、ついで益田恭尚氏の対コメント論に触発されて、未消化な部分はあるとしても私見を述べたいと思います。益田氏の論は簡潔、共感するところが多いので、同氏の2月24日版に沿った形でまとめます。

 

2、水素原料は無尽蔵にあること(水の電気分解により入手の場合)

2.1 EPR:入出力比に関連、あるエネルギーから別のエネルギーに転換する場合、全く外的動力がなければEPRは1を割ります(いわゆるエントロピー増大の法則、または熱力学第二則)。車にしても電気にしてもより使い勝手のよいエネルギーに転換するため6545%ものエネルギーをロスしても皆で利用されるわけです。  

つまりEPRが相当悪いとなっても、人々や市場や政策が是認すれば十分成立します。結局はお金に還元されるわけで、kWh単価、kCal単価がそのベースとなるわけで、その象徴的な例が最近の電力自由化―競争入札に現われていると思います。またお金だけではないよというのが風力、太陽などのグリーンパワーでしょう。

2.2 原子力をもし絞る必要が生じた場合、−これは将来少子高齢化による需要減、地球温暖化抑止とあいまって省エネがじわりと浸透していくこと→原子力の増加―のストーリーの結果、いずれ来る可能性が高いーこれは水力、火力との関係はあるにしても、まず週末に、ついで毎深夜原子力を絞る事態が生じます。

  個人的にはこの結果を受けて原子力を絞るとか、将来 電力系統に占める比率を下げるために廃止する、の考えは最もナンセンスと考えます。

 

2.4 原子力にかかる余剰が予見されても、需要がへたることが見えるので20世紀のようにすぐ揚水発電開発とはならないでしょう

2.5 しかしこの余剰電力は化石燃料と異なり格段に安い、自流式水力と同じです。これを利用するとしないでは国民経済に与える影響ははかりしれない。

2.5 よってこの電力は他の産業の活性化―リサイクルによる有用物質(希少資源)の抽出、産業廃棄物の処分、効率的二次電池の普及、水素の生産―など計り知れない用途が考えられます。

2.6 石井先生のEPR的にいえばエネルギーとしての効率は悪くとも、コスト的なメリットはたいへん大きいといえます。かりに水素の生産だけに限定するならば、専用の原子炉を開発する場合に比し問題なく安くなると考えられます。

2.7 最近「もんじゅ」を利用して水素生産の研究をする、といった記事がでています。これはなんとも理解できません。Puサイクルへの重要な実証、NaFBRとして安全、運転、保修などの信頼性の見通しを立て、実証炉システムに反映することが「もんじゅ」としての喫緊の課題ではないでしょうか。単に原子力で水素発生と限定するなら現在進行中の高温ガス炉の中でまず追求すべきものと思います。

 

3、貯蔵ができること

3.1 原文は・・・電気が貯蔵できないことは利用上問題・・・、は・・・貯蔵が高コストである・・というべきものであります。 原文で揚水発電、Li電池、Ni水素電池、が実用化、さらに水素も は同感です。  

3.2深夜電力などの余剰分は2.5, 2.6に述べたようにこれを多目的に使えば、単に電力貯蔵だけでなく、環境対策に寄与し、新しい産業の興隆を促し、さらに技術立国 日本の立場を高めることになることは確かであると考えます。

 

4、パイプラインか送電線か

4.1  これは経済性とともにその技術への信頼感(親近感とも言うべき)、国情(伝統)といったものも大きく関係すると思われます。昔東京湾にパイプライン敷設が議論されたことが思い出されますー発展的にはならなかった。

4.2 将来「水素時代」がくるとしても、パイプ、燃料電池、革新的電池の輸送、または配電線、なんらかの併用方式、水素の直接利用(マツダのエンジン)などがあるでしょう。わが国ではパイプラインを引き回すのはなじみが良くないような気がします。まず自動車と水素がどの程度相性が良くなるか、その次にもろもろのインフラが関係することと思います。

 

5、電力業界が燃料電池をNEDOなど外部頼み

5.1電力はNaS電池を実用化し、普及活動していると聞いています。

5.2 お説のように大容量、の電池開発―それは燃料電池が本命かもしれませんーを電力としてもっと力をいれるべきものと思います。

 

6、石油不足と水素利用

6.1化石利用からの水素改質は全くナンセンス・・・同感。

やるならば原子力、風力、太陽などの自然エネルギーから水素を製造すべきです。

                                    以上