050226  中国のエネルギー外交: 武器を売って石油を買う
 
東シナ海のガス開発をめぐる日中対立が激化の様相を見せていますが、中国は増大する国内の
エネルギー需要に対処するため、いわばなりふり構わぬ資源エネルギー外交を展開しています。
その結果日中だけではなく米中その他の国際関係にも大きな影響が生じつつあり、益々要注意
です。今朝拙宅に舞い込んできたあるメルマガの一部をご紹介します。(標題など小生が若干
手を入てあります。)ご参考まで。
--KK
 
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     中国のエネルギー外交 
       〜制裁対象国相手、石油対価に武器供与〜 
  
   
  ■政治的影響力の浸透狙い---米国に警戒感

 経済成長に比例してエネルギー不足が深刻化している中国が、国外からの石油調達の対
 価として武器を供与するという“資源外交”を推し進めている。売却兵器は小火器から
 大量破壊兵器関連部品にまで及んでおり、産油国との政治、軍事的連携は強まる一方だ。
 供与先は、ブッシュ米政権が「主要なテロ支援国家」と見なすイランなど、制裁対象国
 に集中しており、専門家は「中国のエネルギー需要が国際政治に与える影響は今後さら
 に強まる」と警戒している。(長谷川周人・産経新聞) 

 日本の石油業界筋によると、中国は石油採掘権の確保を目指すイランやスーダンなどで、
 見返りに銃器やロケット砲などの無償提供という条件提示を繰り返している。入札価格
 が他国の企業と同水準でも、「軍が兵器を手土産に軍事外交を展開するから、“丸腰”
 の日本などは勝負にならない」(同筋)という。

 一方、英日曜紙サンデー・タイムズによれば、イランでは核兵器や弾道ミサイルの部品
 まで石油代金の一部に充てている。事実なら、地域の軍事バランスにも影響してくる重
 大な問題で、中東とのつながりを深める中国の狙いは「単なる企業収益だけではない」
 (同紙)ことになる。

 同紙は、世界第五位の石油輸出国で米国の総輸入量の15%を占めるベネズエラが近年、
 対米関係悪化とともに中国に急接近しているとも指摘。すでに四百億ドルの投資を決め
 た中国との蜜月関係は今後、「米帝国への新たな攻撃」(チャベス・ベネズエラ大統領)
 となり、米国のエネルギー安保を脅かすと警告する。

 中国が石油供給元を開拓し続ける最大の目的はむろん、経済成長の持続にある。事業主
 体の中国三大石油資本も、国際市場から年間百億ドル前後の資金を調達するとされる時
 代だ。ビジネスが過度に政治化すれば、投資家の離反を招き、経営の根幹は揺らぎかね
 ない。
 こうした実情を踏まえれば、中国による世界の資源買いあさりが直ちに米欧との政治衝
 突に発展する可能性は少ない。

 ただ、世界第二の石油輸入国の中国は、海外権益原油が全輸入量の22%に過ぎないか
 ら、さらなる権益拡大を目指そうとするのは間違いない。しかも、問題は、調達先がイ
 ランのほか、スーダンなど人権問題を抱えて米欧の制裁対象となる地域に集中している
 点だ。
 国際石油資本(メジャー)との経済的競合を避けるためとはいえ、そこに必然的に政治
 的対立の構図が生まれてくる。

 例えば、欧米は大量虐殺が起きたスーダンに圧力をかけるのに対し、その産油量の七割
 近くを権益として持つ中国は慎重だ。米国は昨秋、国連に石油禁輸措置を盛り込んだ決
 議案を提出したが、中国は拒否権発動をちらつかせ反対を貫いた。

 イランの核問題でも、ブッシュ政権は国連安全保障理事会への付託を視野に強硬姿勢で
 臨むものの、イランに数十の油田開発案件を抱える中国の反応は鈍い。米国も北朝鮮の
 核問題では対北交渉の窓口の中国の協力をあてにしており、苦しい対中配慮を迫られて
 いる。
 実際、米政府はこの一月、イランへのミサイル技術輸出に関与したとして、中国の軍需
 関連企業八社への経済制裁に踏み切った。米政府はしかし、官報に掲載した後は口を閉
 ざし深追いは避けているようにもみえる。

 日本の外交関係筋は「中国は対米関係が悪化する産油国にそっと近づき、政治的影響力
 の浸透を狙っており、ブッシュ政権は対中政策でますます難しいかじ取りを迫られるだ
 ろう」と指摘する。

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「国際戦略コラム」 No. 1912        
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