Re:「原子力はなぜ温暖化対策にはならないのか?」−−原子力エネルギー分析の例:ASPO (石井吉徳氏から) 匿名希望氏のコメント
 
標記メール(3/3)でご紹介したJohn Busby なる人物の"Why Nuclear Power is not the answer to Global Warming"という論文(小野章昌氏による全訳ご参照)について、ある一流研究所の著名専門家(匿名希望)から次のようなコメントをいただきました。ご参考まで。
--KK
 
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「包括的でクールな分析」とは思いません。エクセントリックなグリーンぽい方のご意見かと存じます。ところでこのなかで、Net Energyといわれるのはどこの部分でしょうか、私も相当早とちりの傾向もあり見過ごしているのかもしれませんが、見出せません。

ウラン鉱石の品位を論じられているようですが、確かに海水ウランといわれると回収コストが相当大きくなり、どだい回収する意味があるのかどうか問題です。今、世界でほぼ確かだろうといわれるウラン資源量は、130ドル/金属ウランkg以下で採掘されるもの、約460万トン、現在世界の原子力発電所が使いっきりの使い方で、60年とか70年分といっているものです。一般に資源論で使われる数字は約1500万トンです、ただしこれはSpeculativeと言って、海水ウランは入ってませんが、本当のところはわかりません。専門家の中にはこんなにはないのではと言っている人もいます。いずれにしても相手にしているのは130ドル以下のもので、発電コストに大きくは影響を与えるものではありません。
 
一昨年評判になったMITレポートでは、基本的には彼らはプルトニウム利用に反対なので、ウラン資源は今世紀の間問題がないほど大量にあると根拠もなしで言ってます。今世界全体で、原子力発電所が約400基、我々の希望的観測で、2100年で4000から5000基としました。これぐらいになると1500万トンのウランでも足りませんで、プルトニウムのリサイクルでカバーする事になります。さて2万基となるとうちの希望の4倍から5倍になりますが、世界全体のエネルギー需要がそこまで大きくなるとは私どもは想定しません。
 
もしそうだとすると累積のウラン消費量はリサイクルをかけても相当なものになると思いますが、量としては供給可能と思います。エネルギーは全部原子力ですからその過程のどこかで炭酸ガスがどうのこうのという言いがかりは通用しませんね。しかしプルトニウムを作る速度の問題があるので5000基でも相当早くから手を打たないと追いつけない可能性が大きいと思ってます。我々の需要量は2100年断面で、通常型に比べて、3分の一無条件で省エネだといってカットしてあり、特に途上国の再生だか省エネだかを想像を絶する形で実行しないと、資源戦争に本当になってしまうのではないかと恐れます。

本当の「包括的でクールな分析」が求められるという事には異論はないどころか、賛成です。しかしこのペーパーがその分析とは思いません。
 

-----Original Message-----
From: Kumao Kaneko [mailto:kkaneko@eeecom.jp]
Sent: Thursday, March 03, 2005
Subject: EEE会議:「原子力はなぜ温暖化対策にはならないのか?」−−原子力エネルギー分析の例:ASPO (石井吉徳氏から)