◆イラン大型原発、来年初めに本格稼働の見通し
     (朝日新聞 2005/3/6)

 イランが南西部のブシェールで建設中の原発に、ロシアが核燃料を供給する協定が先月末に成立したことで、中東初の大型原発が来年初めには稼働を始める見通しとなった。核兵器開発疑惑で米国の追及を受けるイランにとって、核大国ロシアとの関係強化は追い風だ。ウラン濃縮活動の停止を余儀なくされるなか、英仏独との間で続く核交渉を有利に進め、独自の核燃料サイクル計画温存の道を探ろうとする思惑も背後にある。
 「核問題が国連安全保障理事会に付託されれば、即座にウラン濃縮を再開する」
 イラン最高安全保障委員会のロハニ事務局長は5日、テヘランでの会見で断言した。

 2月末のブッシュ米大統領訪欧で、米欧は「イランの核兵器保有阻止」で一致した。その直後のロシアとの核燃料供給協定成立は、イランにとって「逆風のなかの大きな成果」(西側外交筋)。ロハニ事務局長の強い言葉は、ロシアを取り込んだことによるイラン側の強気の証しでもある。
 95年に着工したブシェール原発は、技術的問題や米国の反対などで、99年稼働の予定がずれ込んだ。02年に米国は、ウラン濃縮などのイランによる秘密の核活動を指摘、プルトニウム製造も可能になるとして、ブシェール原発の使用済み核燃料の行方も問題にした。
 イランとロシアの協定では、使用済み核燃料のロシアへの全量返還をうたっており、燃料が兵器転用されないとロシアが国際社会に保証することを意味する。
 調印時には、燃料供給の今後の日程は明かされなかったが、両国の報道を総合すると、ロシアは今後10年間、同原発に核燃料を供給するとみられる。ロシアとの関係が長期にわたることもイランには大きな成果だ。
 イラン側はブシェールで、総額8億ドルをかけた1000メガワット級の1号基に加え、2号基もロシアとの間で着工に向けた話し合いを進める。
 イラン・イラク戦争後に人口が爆発的に増えたイランは、今後の経済成長による電力需要の増大を見込み、ブシェール級の原発6〜7基が必要だとしている。ハラジ外相は、ロシアとの調印後に「最大で20基必要だ」とまで述べた。
 英仏独との核交渉では「原発の数が増えた場合、国外からの燃料供給が持続する保証はない」(サレヒ外相顧問)として、独自の核燃料サイクル計画の温存をはかるとみられる。 (03/06 19:25)

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◆北朝鮮ウラン濃縮「存在」 日米韓中ロが一致
     (同上)

 米国務省のデトラニ朝鮮半島和平協議担当特使は3日、北朝鮮の核問題をめぐる6者協議で最大の焦点になっているウラン濃縮計画について、日米韓中ロ5カ国は同計画が存在するとの認識で一致していると明言した。北朝鮮が2日に発表した備忘録で6者協議に復帰する条件に米国の「誠意」などを挙げたことに対しては、前提条件なしで協議に応じるよう改めて求めた。
 プリンストン大で開かれた北朝鮮の核問題に関するセミナーで語った。ウラン濃縮計画の存在を6者協議の議長国・中国も認めているとの見方を米政府高官が公の場で明らかにしたのは、初めてのことだ。
 同計画については、北朝鮮が存在を否定。中国も当初は同計画があるとする米国の主張に懐疑的で、中国政府高官が証拠を共有しようとしない米政府への不信感を公言したこともあった。しかし、昨年後半に一転して「存在する」との認識を外交ルートを通じて米政府に伝えていたことがわかっている。
 セミナーでデトラニ特使は「(北朝鮮を除く)6者協議のすべての当事国は、ウラン濃縮計画があると信じている。同計画は(朝鮮半島の非核化をうたった)南北共同宣言や米朝枠組み合意に違反しているという点でも5カ国は一致している」と指摘。中国は表向き北朝鮮に理解を示す姿勢を見せているが、水面下では米国に同調しているとの認識を示した。
 また、北朝鮮が米朝2国間協議を求めていることについては「前回の6者協議では米朝接触が2時間を超えた」と述べ、次回の6者協議でも再び北朝鮮との話し合いに応じる構えを見せた。
 さらに、北朝鮮が核の放棄に応じれば、「多国間の枠組みによる安全の保証」「経済改革に対する支援」「インフラの整備」「エネルギー支援」「関係正常化」などに応じる用意がある、と改めて強調した。

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◆IAEA、核不拡散強化進まず 北朝鮮問題などに忙殺
    (同上)

 国際原子力機関(IAEA)の3月理事会が3日、4日間の日程を終えた。北朝鮮やイランの核問題という眼前の課題への対応に追われ、エルバラダイ事務局長が初日に示したウラン濃縮とプルトニウム再処理を多国間の管理下に置くといった核不拡散体制の強化という「大きな問題にまで手が回らなかった」(理事会筋)のが実情だ。
 核不拡散体制の危機は03年の北朝鮮による核不拡散条約(NPT)脱退表明で深刻化。リビアの核放棄で「核の闇市場」の存在が明らかになり、テロリスト集団が核兵器や放射性物質を利用した「汚い爆弾」を入手する危険性も指摘される。
 国連のアナン事務総長は「国連創設60周年と、NPT体制発足35周年の年だ」としてNPT体制強化の必要性を強調。3月下旬に示す国連改革案でも重要な柱の一つになるとみられている。
 今回は、5月に開かれる5年に1度のNPT再検討会議前の最後の理事会。多国間管理のほか、エルバラダイ事務局長が提案している濃縮・再処理施設の新規建設5年間凍結、小規模の原子力活動を行う国への査察免除制度の撤廃など、35年前には想定外だった核拡散の抜け道を封じる方策を話し合う「不拡散体制強化のための理事会」になることが期待された。
 だが、理事会筋によると、規制強化策については多くの国が「十分に検討していない」などとして具体的な言及を避けたという。