050309  Re: 「原子力はなぜ温暖化対策にはならないのか?」−原子力エネルギー分析の例:ASPO(石井吉徳氏から)  松井一秋氏

 
エネルギー入出力比については、次の世界原子力協会(World Nuclear Association=WNA)のサイトに出ています。
http://world-nuclear.org/info/inf11.htm
 
もっとも世界原子力協会のHPでは信じられない、内山筑波大教授の仕事ではとおっしゃられると、困りますが。
原子力発電で、値が低い例は昔のチャップマンなどにありますが、ガス拡散濃縮と、当時のえらい低い熱効率を使ったためとIAEAのレポートにも記載があり、現状では参考にならないと思います。ただこれを盾に取って来られる方にはきちんと説明する必要はあります。   
 
 松井一秋
 
-----Original Message-----
From: Kumao KANEKO [mailto:kkaneko@eeecom.jp]
Sent: Monday, March 07, 2005 11:30 AM
To: Undisclosed-Recipient:;
Subject: EEE会議: Re: 「原子力はなぜ温暖化対策にはならないのか?」−原子力エネルギー分析の例:ASPO(石井吉徳氏から)  益田恭尚氏の意見

皆様
 
石井先生から貴重な一石を投げて頂き、エネルギー問題を憂うOLD原子力技術者として感謝しております。
シモンズ氏のパワーポイントを見る限り、「Nuclear:impossible and probably
uranium constrained]以外は、その主張に略同意できますし、正しい主張だと考えます。

石井先生の言われる『今必要なのは、いわゆる「PlanB」です。日本にはそれが無い。』も全く同感です。
「EEE会議」、「エネルギー問題に発言する会」でも、今すぐにでも原子力が石油にとって代わることができると主張しているわけではありません。世界の現状を見るとき、シモンズ氏や石井先生のご心配のように、あまりにもエネルギー問題に無関心で、このまま便利な石油だけに頼っていてどうなるかという危機感があります。その意味でも、会の名前を“エネルギー問題に発言する”としているわけです。そして「国民のためのエネルギー戦略」、いえ世界の爲のエネルギー戦略を考えている心算です。(多少原子力ばかな点はあるかも知れませんが。)
現在やるべきことは、無駄の排除と省エネ、世界人口の抑制であることに間違いありませんが、それと並んで停滞を続けている原子力の開発ではないでしょうか。
先ず、原子力により発電の相当の部分をまかなうことができます。そのためには軽水炉の建設を進めること、次に将来のウランの高騰やウラン資源の問題、プルトニウム問題等を見越して高速増殖炉を開発することだと考えます。さらにこのような技術基盤があれば、やる気さえ起こせば古川氏が主張しておられる、資源的にも豊富なトリウム利用も可能ですし、海水中のウランも海流のエネルギーをうまく利用することである程度のEPRで採取できる可能性もあると考えます。
例え、原子力で交通機関を含めた全世界のエネルギーを賄えない(原子力船、原子炉による水素製造、電気自動車があるが)からといって、原子力の開発が“暖化対策にはならない”と決め付ける必要はないと考えます。
原子力について石井先生の尚一層のご理解を願う次第です。

追伸:
EPRの重要性を教えて頂き、その重要性を十分認識致しました。
原子力のEPRは濃縮にウラン遠心分離法を使っている現状では、伊藤勝氏の計算(原子力工業24巻3号)の15程度はあり、十分有効であると思っております。データーが30年前と古いので、中立機関で最新のデーターで計算していただけないものかと思っております。
それより驚いたのが、現在石油代替の第一候補として利用を進めている液化天然ガスのEPRです。液化過程で必要とするエネルギーのためEPR1.46という非常に低い値となっています。天然ガスは二酸化炭素発生量も少なく、コンバインドサイクルの発明により、経済的にも非常に優れたものであると評価され、世界の火力燃料の趨勢となっております。
液化天然ガスの利用について、EPRからみた場合(正にエネルギーを地球に放出し続けているのですが)、どう考えたらよいか教えて頂けたら幸いです。

益田恭尚