050314  最大の核拡散国はロシアだ!  難航する米の対露核管理強化支援

 
イランや北朝鮮の核兵器開発が問題になっていますが、それよりもっと危ないのは、元超大国で現在も「核兵器国」であるロシアの核管理体制のお粗末さです。米国もロシアの核物質や技術が外国、特にテロリスト・グループに流出することを警戒し、巨額の財政支援を行なって管理体制の強化を手伝っていますが、必ずしも米露協力はスムーズに進んでいないようです。その辺の実情を伝える報道記事が、今朝拙宅に舞い込んできたあるメルマガに載っていましたので、ご紹介します。ご参考まで。
 
これを読むと、米国ですら梃子摺っているところへ、核兵器を作ったこともない日本がいくら財政・技術支援を行なっても「焼け石に水」だということがよく分かります。それでいて、ロシアはアジアへの原子力輸出には熱を上げています。冷戦時代にソ連相手の核・原子力交渉で散々不愉快な経験をしたので、小生は昔から、日本による対露核管理支援にはどうしても賛成する気になれません。とはいえ、放っておくとまた日本海に垂れ流しということになるだろうし、全く困ったものです。
--KK
 
 
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◆核流出を懸念するロシア高官
 米ロ首脳会談での核管理強化合意に愛国派が反発
 

 米国のブッシュ大統領とロシアのプーチン大統領は先月24日、スロバキアの首都ブラチスラバで行った首脳会談で、北朝鮮やイランの核保有阻止に向けた協力と、核テロ防止のための核管理強化で合意した。ロシアが核管理強化で合意した背景には、「現状では核物質がテロリストに渡る可能性を否定できない」とするロシア高官らの懸念があるが、ロシアの愛国派勢力は「国家の最高機密を米国に明かすものだ」として反発を強めている。
(モスクワ・大川佳宏)

 米ロ首脳会談での主要な合意事項は、北朝鮮やイランの核保有阻止に向けた協力と、核テロ防止に向けた核の管理強化だ。イランのブシェール原発建設にロシアが協力している問題で、ロシアは首脳会談での米側との合意に基づき、使用済み核燃料引き渡し協定の調印を条件に二十七日、核燃料供給と使用済み燃料返還に関する協定をイランと締結した。
 米側はイラン核開発への警戒を緩めてはいないが、使用済み核燃料の引き渡しを明確化することで一応、ロシアが、イランの核開発を阻止する形とはなった。
 一方、核テロ防止での核管理強化では、米ロの代表者でつくる共同委員会が今年七月一日までに、米ロの核保管施設を査察し保安・流出防止体制について両国大統領に報告するとともに、同委員会による査察体制を恒常化することで合意した。

 ロシアが核管理強化に合意した背景には、ロシア国内などの核施設から流出した核物質がテロリストの手に渡り、それがロシアに対し使用されることへの強い警戒感がある。パトルシェフ連邦保安局(FSB)長官はFSB幹部会議で、「国際テロリストが大量破壊兵器を入手し使用する危険性が高まっている」と懸念を表明し、また、ロシア軍のバルエフスキー参謀総長は「核兵器が極めて近い将来に、核大国の管理下から持ち出される可能性がある」と警鐘を鳴らした。
 これらは事実上、FSB長官と参謀総長が核管理強化を呼び掛けた発言であり、当然、その懸念を裏付けるだけの材料が背景にあると考えられる。
 連邦政府との和平交渉を呼び掛けてきたチェチェンのマスハドフ元大統領が八日、連邦軍との戦闘で死亡し、武装勢力はその「報復」を宣言した。今後、チェチェンによる大規模テロが行われる可能性があるが、チェチェンとの接触がある政商ベレゾフスキー元下院議員は「チェチェン武装勢力が携帯型核兵器を所持している」と発言している。ベレゾフスキー氏の発言を裏付けする情報はこれまでのところないが、当局の警戒感は強い。
 それでなくてもロシアはイスラム過激派が拠点の一つとするアフガニスタンや中央アジアと陸続きで近い位置にあり、イスラム過激派の国内への浸透と、ロシアを標的としたテロに対する懸念は極めて大きい。

 ロシアの核関連施設の保安体制の不備は、政府が必要な予算を確保できていないことが主因であり、欧米諸国は「グローバル・パートナーシップ」プログラムに基づき、余剰核の廃棄や核関連施設の保安体制確保に二百億ドルを支出する計画だ。この二百億ドルの約半分は米国が拠出するが、米ロ首脳会談での合意に基づく相互査察の実施が、資金拠出の条件だと指摘される。
 しかし、相互査察の実施は当然、国家の最高機密である核関連施設の内部に米国の専門家を立ち入らせ、核戦力の配備状況やその位置を米国側に明かすことにつながる。ロシアの一部メディアは「米国はロシアの核戦力をコントロールしようとしている」と報じており、ロシアの愛国派勢力は「プーチン大統領はまたもや米国に譲歩した」として激しい反発を示した。
 昨年末に実施した年金生活者らへの恩典(公共交通の無料乗車や医薬品の無料配布など)廃止と現金支給への切り替えが国民の強い反発を招き、レバダ・センターによる世論調査ではプーチン大統領の支持率は昨年十二月の39%からさらに低下し、一月の調査では32%となった。
 核管理強化への愛国主義勢力の反発により、プーチン大統領はその支持率をさらに低下させる可能性が指摘されている。
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ソース: The World News Mail@2005.3.15 No.558