050321  マラッカ海峡海賊襲撃事件と日本のエネルギー安全保障: 防衛長官の記者会見

 
今回のマラッカ海峡での邦人船員襲撃・拉致事件について、防衛庁の大野長官が記者会見(3/15)で述べた内容です。確かにこの通りなのでしょうが、若干頼りないという印象があります。ちなみに、この問題は昨年8月25日にEEE会議主催で開催された特別シンポジウム「エネルギー国家戦略と原子力:日本の選択」(経団連会館にて)でも取り上げられ、パネリストの秋山元防衛事務次官や江畑謙介氏(軍事評論家)から問題提起があったところで、かなり前から予想されていた事件です。日本人は、石油危機とかエネルギー安全保障問題を考えるとき、こういう海上交通路の安全問題も常に考えに入れておくべきで、事件が起きてから騒ぐようではいけません。ご参考まで。
なお、上記シンポジウムの詳細な議事録は、EEE会議のHP(http://www.eeecom.jp/)の「最新情報」に載っていますので、閲覧して下さい。
--KK
 
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【3月15日防衛庁発表 大野長官会見概要 (0940〜0948)】


2 質疑応答
 
Q:マラッカ海峡で日本人が拉致されたという話がありますが、長官は年初の
東南アジア訪問で海賊対策なども向こうの国とお話されたと思うのですが、今
回の事件をどのようにご覧になっていますか。

A:今、事件については外務省で情報収集しておりますし、小泉総理から「各
省庁、連携を良くとって対応するように。」という指示がありました。
あの近辺で海賊案件は年間3、40件あるのではないでしょうか。割合、日本
が関わる件数は少なかったと思いますけれども、今回このような形で関わった
のは非常に残念であり、こういう事件が起こらないように沿岸諸国にもう少し
注意を要請したいと思っています。
今年の正月に私が参りました時は、シンガポール、マレーシアの国防大臣とそ
れぞれマラッカ海峡の問題について話し合いを致しました。私の方からは、
「マラッカ海峡の安全航行は、石油タンカーがマラッカ海峡を通って来るとい
う日本の死活に関する非常に重要な問題であり、我々日本として何か出来るよ
うなことがあれば協力をさせていただきたい。」と申し上げました。

これに対し、「その話は非常に有為だと思うが、海峡の安全航行というのは沿
岸国の責任において行われることが一番であり、沿岸国の主権はきちっと確立
しておきたい。ご協力いただけるのであれば、その主権に相反しない範囲内で
よろしくお願いしたい。」という話がありました。我々はこの問題をテロと海
賊に分けて考えなければいけないと思っています。
テロというのは地球に住む人類共通の敵ですから、国際的に協力をして対応し
ていかなければいけない。例えば、アセアン・リージョナル・フォーラムのデ
ィフェンス・フォーラムでもそういう議論はやっております。
なかなか仕分けは難しいのですけれども、テロとなればもうちょっと国際的な
脅威が必要ですが、海賊となりますと一国の治安の問題となって参りまして、
沿岸国に是非とも取り締まりを強化してもらうことになろうかと思います。
いずれにしても防衛庁として直接には海賊という問題は関与しておりませんが、
テロも含めてマラッカ海峡の安全航行という意味でこのディフェンス・フォー
ラム等で今後とも議論していきたいと思っております。

Q:今回の事件に当たって、主権に反しない範囲内で防衛庁としての具体的な
協力というのは考えられるのでしょうか。
 
A:これは海賊の問題ですから、やはり沿岸国の問題です。ただ、テロ、海賊
を含めて大きな意味でマラッカ海峡の安全航行ということは、これまでも議論
をやっていますけれども、国際的な防衛関係者の集まりで少し議論をやりたい
と思っています。


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ソース:
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