050404  Re: ウラン、石油及び天然ガスの需給及び価格の見通し:  豊田正敏氏←小野章昌氏
 
標記のメール(4/3 豊田正敏氏)に対し、再び小野章昌氏から次のようなコメントをいただきました。ご参考まで。
豊田、小野両氏のご意見に対するコメントを歓迎します。とくに石油・ガス価格の変動とウラン価格の関係などについて(関係の有無も含め)。
--KK
 
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豊田様

藤和彦さんの「石油を読む」は早速取り寄せて勉強させていただきます。

なお私が米国の例を取り上げましたのは、現在のサウジアラビアに匹敵する生産量を上げていた米国48州で、「埋蔵量のピークを迎えた後はどのような精密探査を行っても埋蔵量は下がる一方であったという事実は無視できない」と申し上げたかったからです。

石井先生がおっしゃられるように、中東は大陸移動時期もその内海的環境が維持された(従って石油やガス資源が地質変動から守られた)地球上でも例外的な場所と理解しています。「もう1つの中東は有り得ない」と言う先生のご説明はよく分かるような気がします。また実際に1970年代以降には超巨大油田の発見はなされておらず、統計的に総発見量も減少を続けています。大きな油田から発見されて行くという経験則からも、これだけ1世紀近くにわたって探査が行われてきた地球上に、まだまだ巨大油田が眠っていると考えるのは楽観的すぎるのではないでしょうか?比較的規模の小さな油田はまだまだ発見されて行くでしょうが、その歴史的全体像を示すのが先達である米国48州の例ではないかと考えています。

金属資源と化石燃料の違いは、その成因にあって、化石燃料は地球上に生育した有機物がsource materialであるだけに、その総量には限度があり、金属資源のように探査を
続けて、あるいは技術の進化によって、より低品位の資源を利用して、総資源量を増やして行くことができるものとは異なっていると理解しています。

石油について参照させていただいた米国地質調査所レポートは、既知資源からでも回収率を上げれば、すなわち絞れば絞るほど、石油は回収できるという事を意味していると思うのですが、問題は最終的な回収率ではなく、生産ピークを過ぎると生産量は減少を続け、生産コスト(自噴でなくなるために人工を加えた回収コスト)は上昇を続けるということではないでしょうか。

コストさえ掛ければ(エネルギーを投入すれば)オイルサンドのような非在来型資源からも石油を回収できますし、石油資源の最終的な枯渇ということを心配する必要はないと思いますが、現在のような贅沢な使い方は許されないのではないかと感じています。

価格上昇に伴って消費量が減少するということは納得できますが、仮に米国のガソリン代が倍に上昇しても、現在の日本の価格と同じ程度ですので、車社会の米国での需要が急減するとは考え難い気がしますし、石油の需要は価格に対してかなり下方硬直的な気がしていますが、この点の分析につきましては、是非藤和彦さんの御本を読ませていただいてから、考えさせていただきたいと思っております。

小野章昌

 
----- Original Message -----
From: Kumao KANEKO
Sent: Sunday, April 03, 2005 10:50 PM
Subject: EEE会議 Re: ウラン、石油及び天然ガスの需給及び価格の見通し:  豊田正敏氏→小野章昌氏

皆様
 
標記テーマに関する小野章昌氏の意見(4/2)に対する豊田正敏氏の再コメントです。ご参考まで。
--KK
 
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小野様
早速お返事有り難うございます。ウランについては、1980年初頭に、石油などの高騰に伴い、思惑的に100ドル
/kgU(ポンドU3O8当たり40ドル)に急騰し、今後さらに高くなると考えられ、INFCEでも世界各国全ての国が2000
年には250ドル/kgUになるであろうと予想していたこともあり、今世紀中にも一時的にその程度になることもあ
り得るのではないかと考えておりますが、 定量的な解析を行っているわけではなく、貴殿の考えに異論はあり
ません。
石油に関しては、三井物産の現役の方の見解を是非お聞きした上で、議論したいと考えております。特に、埋蔵
量について、米国の例から、「1959年のピークを過ぎてから決して回復していません。生産量も1970年のピー
クから下がり続けているのです。このような「歴史の実績」に全く反対の理論を仮定し、それに基づいて世界
の石油資源見通しが打出されているところに怖さを感じます。」と言っておられますが、米国の探鉱密度は、
世界の他の国に比べて比較にならないほど高く、
かなり正確に埋蔵量を推定でき、既にピークを過ぎておりますが、他の国の探鉱密度はその数十分の一程度で
あり、また、地質的な有望性も米国と異なることなどから、米国の例から世界全体を類推することには問題があ
ると考えます。ウランや銅とは比較できないにしても、探鉱や採鉱技術の今後の進歩によって、埋蔵量は時とと
もに増えるというのが過去の実績からも言えるのではないでしょうか。価格についても、ウランに比べて、短期
間の価格弾力性が低く、価格が急騰すると、投資がなされ生産能力が増加する5~10年間は高価格が続き、その後
需給が緩むことにより価格が急落する。そうすると、需要が増加し、また、数年後に上昇に転ずるというサイ
クルを繰り返しております。勿論、最近の中国などの需要の急増も考慮すべきでありますが、今の状態が続け
ば、世界的な経済危機を招き、需要も急減すると考えられます。これらについては、通産省、石油公団などを経
て現在内閣官房内閣参事官の藤和彦氏の「石油を読む」(日経文庫)を参照された上で議論したい。特に、同書の
V.石油神話、3.石油の将来は危ないかP.137~156 を参照されたい。
何れにしても、今世紀中には石油は枯渇することは違いなさそうなので、航空機等の輸送用燃料やナフサなど
石油に代わるエネルギー源を安価に大量に得る見通しがないところに問題があると考えます。以上