050415 「日露関係改善へ、エネ協力」  十市 勉氏の意見)  豊田正敏氏のコメント

 

標記メール(4/13)でご披露した十市 勉氏の論文に対し、豊田正敏氏から次のようなコメントをいただ  きました。ご参考まで。 十市、豊田両氏のご意見に対し、あるいはその他の論点に関し、コメントのある方はこの際積極的に開陳して下さい。

--KK

 

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日本エネルギー経済研究所十市常務理事の電気新聞の時評「ウェーブ」欄に発表された論文に対して次のようにコメントしたい。

 

 わが国は、政情不安定な中東に石油の約9割を依存し、しかもマラッカ海峡を経由する危険なシーレーンで輸送しなければならず、エネルギーセキュリィティ上問題であり、石油の供給源の多様化を図ることが急務である。従って、今回の十市氏の論文は時宜に適したものと考える。サハリンや東シベリアの石油、天然ガス資源は従来予想されていたものよりもかなり増加すると見られている。石油については、欧米石油技術サービス会社とロシア石油会社の合弁企業を通じて、西側先端技術を導入することにより、埋蔵量の大幅な増加が期待されている。サハリンの天然ガス・石油資源は海岸沿いの浅い海底下に眠っている。商業生産可能な確認埋蔵量は30兆立方フィート以上、即ち、日本の天然ガス需要の15年分である。さらに、北サハリンの堆積盆には未発見の膨大な埋蔵量(既発見の確認埋蔵量の6~7)があることがほぼ確実である。

 

 問題は輸送ルートであって、東シベリアからのパイプラインはツンドラ地帯を通るなど建設費が高く条件が悪いし、サハリンからのルートは距離も短く、殆ど陸続きであるが、漁業補償問題がある。わが国の民間のエネルギー企業は、これまで以上に経済性および収益性を重視するようになっているので、態度をはっきりしないようである。然し、この問題は将来、わが国と中国及び米国の三つ巴の争奪戦になることが予想されるので、遅れをとらないように、パイプラインのリスクの国による負担などについて検討し、早期に態度を決めるべきであると考える。

 

 次に、中国の石油の需要は増加の一途を辿っており、石油輸出国から、輸入国となり、添付ファイルの図1に示すように、2004年には輸入依存度が45%となり今後さらに図1のように増加すると予想している。このため、将来の石油の需給の逼迫を懸念し、なりふりかまわず(価格を無視して)世界中から石油権益を買いあさっており、これが今回の石油価格高騰の一因である。然しながら、輸入依存度が50%を超え、石油価格がさらに上昇すれば、従来の石油危機を経験していない中国にとっては、経済的打撃が大きく、これが世界同時不況の引き金になりかねない。中国のGDPに対する石油消費量はわが国の4倍であるので、石油の効率的使用と代替エネルギーの利用により、石油消費量を低減するとともに石油備蓄を進めることによりね石油危機に備えるとともに、石油の消費量を積極的に減らす努力をすべきである。もし、今のようななりふりかまわぬ買いあさりを続け、石油の浪費を続けていれば、米国も黙っておれなく、国際的圧力かがかかることになり、米国と中国の間で、激しい摩擦が起こることが予想される。

   豊田正敏

  

----- Original Message -----
From: Kumao KANEKO
To: Undisclosed-Recipient:;
Sent: Wednesday, April 13, 2005 10:04 AM
Subject: EEE会議(「日露関係改善へ、エネ協力」  十市 勉氏の意見)

皆様
 
日本のエネルギー・セキュリティ上、政情不安な中東への依存度を減らし輸入先の多角化を図ることが喫緊の急務であり、その一環としてロシアとの間で、シベリアやサハリンの石油・ガス開発を推進することが望ましいのは明らかです。
 
しかし、戦後60年も経って未だに平和条約が締結されず、領土問題も未解決な国とどこまで深い関係を結びうるか。期待されたプーチン大統領の訪日日程さえも決まらない状況で、日露関係の将来に明るい展望はあるのか、という厳しい見方があります。ロシア側でも、再びナショナリズムが台頭し、プーチン大統領の指導力が大幅に低下しているとみられる現状では、当面両国関係の好転は望めそうもありません。
 
とはいえ、現実には日露のエネルギー協力プロジェクトは着々と進んでおり、こうした動きをなんとか両国関係の改善につなげてゆく努力は絶やすべきではありません。
 
偶々昨日、十市 勉氏(日本エネルギー経済研究所常務理事、EEE会議会員)が電気新聞の時評「ウェーブ」欄に発表された論文「日露関係改善へ、エネ協力」はその意味で大変示唆に富むものと思います。同氏のご了解を得て、ご紹介させていただきます。ご参考まで。なお、このテーマについてご意見のある方はこの際積極的に開陳して下さい。
 
--KK