すでにご承知の通り、４月３０日から５月７日まで８日間、人道支援物資（医薬品１００万円相当）を運んで北朝鮮を訪問してきました。小生１９９４年以来７回目の訪朝です。産経新聞に国賊と書かれ、右翼の嫌がらせは今も続いていますが、過去１２年小生のスタンスは一貫して変わりません。小生、金正日という個人にもその体制にもいささかなりとも幻想を抱いてはおらず、覚めた目で見ています。段階的体制変革、民主化、経済の改革開放は不可欠と思っています。そのためにも日朝国交正常化が必要なのです。人道支援はコツコツと過去１２年間続けています。以上まえおき。核問題について簡単に報告します。

面談した相手は政府機関の「軍縮・平和研究所副所長」の朴賢在博士。同研究所は外務省のシンクタンク。同氏は国際関係論が専門の学者。面談ではブッシュ政権批判、６者協議の見通しなど、あまねく知られている公式論を延々と聞かされたあと、小生、核問題で食い下がり、以下のような一問一答を繰り広げました。
吉田「２月に核保有宣言をしたが、現在、何個保有しているのか」
朴　「何個かは知らない。軍の最高機密だ」
吉田「核爆発実験をせずに核弾頭を生産、保有できるのか」
朴　「軍が保有したと発表したのだから、それを信じればいいではないか」
吉田「確かに広島に投下されたウラン型原爆は実験を経ずに投下され、爆発した。とすると北朝鮮も濃縮ウランで核弾頭生産に踏み切ったのか」
朴　「わが国はウラン濃縮計画は存在しない。認めたこともない。一切存在しない。
ケリー特使来訪の際わが方が認めたというのは米国の捏造だ」
吉田「とすると、やはり寧辺の５メガワット原子炉からの使用済み燃料を再処理して取り出したプルトニウムを材料にしていると解釈して間違いないか」
朴　「その通り。プルトニウムだ」
吉田「古今東西、プルトニウムを材料にして核弾頭開発をして実験せずに保有に至った国は存在しない。プルトニウム型の場合、中心に向けて爆縮反応を起こし、連鎖反応を導くのに高度のハイテク技術を要し、実験は不可欠とされている。北はすでに秘密裡に実験をしたのか」
朴　「実験はしていない」
吉田「とすると抑止力に疑念が生じる。ブッシュ政権に信用してもらえないのではないか」
朴「・・・・・・」（無言。沈黙）　しばらくして話題を転換。
面談が終わり、ホテルに引き揚げたら、約３０分後に朝鮮語の通訳が部屋に飛んできて、「いま朴先生から電話があり、吉田先生に
「プルトニウム型核弾頭の場合、爆発実験は確かに必要、不可欠である。そのことに関しては、いずれはっきりするだろう」
と伝えてくれとのことでした、とのこと。朴氏は専門知識を有しておらず、小生との面談のあと、原子力総局（核関連の統括機関）の専門家に問い合わせたものと思われます。

以上、最後の電話による補足部分を除いては、すべてビデオ収録してあり、すでに９日夜のテレビ朝日「スーパーＪチャネル」「報道ステーション」、ＴＢＳ筑紫哲也ニュース２３などで紹介されました。９日付け毎日新聞朝刊は実験実施説を強調しすぎています。

ご指摘のとおり、北朝鮮政府の高官が「核爆発実験が不可欠」と認めたのは初めてです。ただし朴副所長の「いずれはっきりするだろう」というのは、必ずしも「いずれ実験する」という意味ではなく、「実験せずに済む事態になることも含めて、いずれはっきりする」という意味と解釈すべきと思っています。小生テレビでも必ずそうコメントしているのですが、騒ぎ立てたいの日本のメディアの通弊で、ＴＢＳ以外は「いずれ実験するだろう」というニュアンスの発言だけをつまんで放送され、迷惑しています。小生の感触では、「マイナス効果の大きい実験はなるべく避けたい。その前に米朝二国間交渉に持ち込みたい」といいうのが北のホンネです。

以上ご参考まで。吉田康彦拝。




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吉田　康彦
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