050520  高まる核テロリズムの脅威:米国にとっての「悪夢」のシナリオ
 
あと3ヶ月ちょっとで9.11事件から4周年。米国では最近「核テロ」、つまりテロリスト
グループが米国内の大都市に対し核兵器を使った9.11タイプの攻撃をしかけるのではないか
という危機感が非常に高まっているようです。イランや北朝鮮が米本土に直接核ミサイル攻撃を
仕掛けてくることは当面ありえないが、旧ソ連やパキスタンを中心とする「核の闇市場」から
プルトニウムや高濃縮ウランなどの核物質を入手したテログループによる奇襲攻撃はあり得る
という判断でしょう。この危機感に取り付かれた米国政府は現在なりふり構わずその対策に没頭
しており、とてもNPT再検討会議のことなど構っていられないいう感じです。60年前、
マンハッタン計画に関与したロバート・オッペンハイマー等の科学者たちが予言していたことが
今まさに「悪夢」となって米国民を悩ませているわけです。これを自業自得といわずして何と
言うべきか。
 
偶々今朝拙宅に舞い込んできたあるメルマガに載っていた1つの記事をご紹介します。ご参考
まで。--KK
 
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<高まる核テロリズムの脅威:米国にとっての「悪夢」のシナリオ>

 
●米国土安保省、悪夢のシナリオ公表

 北朝鮮政府は2月に核兵器の保有を宣言したが、4月には核兵器をテロ組織に
売却する可能性を示唆。米国では、核拡散防止条約(NPT)の再検討会議と相
まって、核テロリズムの脅威が改めて論議され始めている。(ワシントン・横山
裕史)

●闇市場からテロ組織へ

 北朝鮮の核兵器開発プログラムをめぐる6カ国協議は昨年6月以来、中断され
たままだ。北朝鮮の核兵器製造推進、核実験準備の兆候など情勢が緊迫する中で、
米国は6月をめどに北朝鮮核問題の国連安保理付託を検討する正念場に差し掛か
りつつある。

 6カ国協議の北朝鮮首席代表を務める金桂冠外務次官らは4月上旬、訪朝した
米国の朝鮮半島問題研究者セリグ・ハリソン氏に、核兵器をテロ組織などに売却
する可能性に言及した。

 デトラニ朝鮮半島和平担当特使は今月3日、ワシントン市内での会合でこの北
朝鮮の発言に言及し、「非常に挑発的だ」と強く批判するとともに、拡散防止構
想(PSI)による北朝鮮への監視を強化していることを明らかにした。同特使
は、「悪夢のシナリオは、核物質や核兵器がテロ組織に渡ることだ」と明言して
いる。

 昨年の大統領選挙でブッシュ大統領とケリー民主党大統領候補は公開テレビ討
論をしたが、2人の見解は米国が直面する最も深刻な脅威が「核テロリズム」で
あるという点で一致した。ジョージ・ワシントン大学のアミタイ・エトジオニ教
授は、「テロリズムと核兵器の結合こそ、国家安全保障に対する最も重大な脅威
である」と強調する。

 米国土安全保障省は3月に、起こり得るテロ攻撃や自然災害のシナリオを明示
した国家計画シナリオを公表した。その筆頭に、テロリストが10キロトンの爆発
力を持つ核爆弾をバンに搭載し、大都市の中心部に乗り付けて爆破し、数多くの
死傷者、数1000億ドルの経済的損失が出るという核テロのシナリオが含められて
いる。

●ずさんな核管理の問題

 米政府は2001年9月11日同時多発テロまでは、核テロの脅威に対してはあまり
関心を払ってこなかった。一部のシンクタンクなどでこの問題が断続的に取り上
げられたことはあるが、米政府は核拡散問題とテロ問題を別々に考えていた。米
政府が核テロの脅威を本格的に意識し、政策的に取り組み始めたのは9.11以降の
ことだ。

 1970年に始まった核拡散防止条約(NPT)体制は現在、NPTに加盟しなが
らひそかに核兵器開発を進めている疑いがある北朝鮮、イランなどのいわゆる
「ならず者国家」による核兵器保有を阻止する対策の方に重点を置く。既に核兵
器を保有しているロシアとかNPT体制外のパキスタンなどからの核物質、核技
術流出の可能性は盲点になってきた。

 ところが9.11で国際テロ組織の脅威が表明化し、2003年にはA.Q.カーン・ネット
ワークという国際的な核闇市場の存在が明るみに出た。

 その闇市場がイラン、リビア、北朝鮮などの「ならず者国家」の核兵器開発計
画に重要な役割を果たしたことが発覚。さらに核物質管理体制がずさんなロシア
や核闇市場の中心だったパキスタンから、核物質や核技術が国際的闇市場に流出
している可能性が問題になっている。

 「ならず者国家」の場合、核査察や経済制裁といった手段でそれらの国の核拡
散活動をある程度まで阻止できる。しかしロシアやパキスタンなど核管理体制が
破綻(はたん)の状態の国から核闇市場を介してテロ組織に流れる核物質や核技
術の移転を察知し、阻止するのは、はるかに難しい。

 米政府は核テロ防止策として、北朝鮮だけでなく、ロシアやパキスタンなど核
供給源の監視にも力を入れ始めている。
 
 
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ソース:
The World News Mail@2005.5.20 No.576