050624  核燃料サイクル・オプションに関する世界各国の動向 : 河田東海夫氏の帰国報告

 
日本の核燃料サイクル路線は、原子力委員会・次期長期計画策定会議のこの1年来の努力等の結果、概ね方向性が定まったと見られますが、原子力発電を推進している各国の最新の動きはどうなっているか、気になるところです。
 
核燃料サイクル開発機構(JNC)理事の河田東海夫氏は、最近ウィーンの国際原子力機関(IAEA)で行なわれた「燃料サイクルオプションに関する技術ワーキンググループ会合」に出席し、このほど帰国されました。その概要を早速次のとおり報告して下さいました。ご参考まで。
 
なお、同氏には、EEE会議主催の第40回講演・研究会(7月6日午後4〜6時)で一層詳しい報告をしていただくことになっておりますので、ご期待下さい。
--KK
 
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5月下旬、IAEAの燃料サイクルオプションに関する技術ワーキンググループ会合に出席してまいりました。
以下、会議で報告された各国の動きのトピックス的なところをご紹介いたします。
 
人口増加と経済成長が著しいインドでは、2050年までに日本の現在の原発設備容量の6倍規模の原発導入が必要と見込まれ、一方、自国のウラン資源に限りがあるため、これに対応するには当面高速炉サイクル実現に全力投入する必要があるという話は、大変印象的でした(トリウム資源は大量にあるのでトリウムサイクル開発も強力に進めるが、実用化までには少し時間がかかる。NPTに加盟していないので濃縮ウランを外から自由に買えない)。
 
インドの代表との雑談では、高速炉開発に国は積極的に資金注入し現場の尻をたたくが、MOX燃料製造や再処理など、サイクルを支えるインフラ整備は時間が掛かるので、現場のほうがそういう要求に追いつけるかという悩みがあるという話でした。
日本では、国も電力も高速炉開発を強力にプッシュする熱意が薄れているという話をしたら、「これだけ石油の値段が上がり始めているのに、理解しがたい。多分日本は金持ちだからノンキにいられるのだろう」と皮肉を言われました。
 
また、ドイツでは、風力発電からの電力供給安定化のために、常時6基の火力発電のバックアップ運転が必要という話も初耳でした。
 
米国の予算委員会でのリサイクル路線見直し議論もおおいに注目すべきところです。
 
JNC 河田東海夫
 
 
 
                               − 2005年トピックス − 

欧州

    フランスALEVA社は、ウラン価格上昇、濃縮需要増を見込み、フロントエンド事業を強化。George Besse II(遠心法濃縮工場)建設に30億ユーロを投資。

    仏ラアーグ再処理工場の2004年末累積処理量は20,500トン。また、ALEVA傘下の3つのMOX 燃料工場(Melox, Cadarache, Dessel)の昨年末までの累積生産量は1,840トン。

    91年廃棄物法に基づく高レベル廃棄物処分のオプションに関する評価報告書(バタイユ・ビロー報告)が本年3月に公表され、2006年に政府の技術選定評価委員会の評価結果が出る。

    英国ではNDAが本年41日付けで正式発足。20の原子力サイトの廃止措置(総予算見積り約500億ポンド)を担当し、2005/2006会計年度予算は約22億ポンド。

    英国CORWMは昨年総廃棄物量評価とその管理方策オプションについての報告を取りまとめ、2006年に議会に最終勧告報告を行う予定。

    ドイツ赤緑連合政権は、高レベル廃棄物の処分に関し、独ゴアレーベンの地下施設に研究を2000年から最長10年間凍結し、代替候補地選定を進めることにしたが、まったく進展なし。

    ドイツでは、16,000機の風力発電機が稼動しているが、電力生産への寄与率は4%に過ぎず、極めて不安定なため、常時6基の火力発電所をバックアップ用として運転している。2003年のみで風力発電推進に27億ユーロの税金を投入。

    スウェーデンの高レベル廃棄物処分場候補地2箇所の調査は順調に進展、2008年に最終処分地を選定。使用済燃料のキャニスタ封入プラント(Encapsulation plant)の建設許可申請来年行う予定。

    スイスでは本年21日に新原子力法を施行。原子力施設立地に関するカントンの拒否権を廃止し、代りに国民投票制度を導入。再処理は20067月から10年間モラトリアム。

 

北米

    米国のNP2010 計画では、AP-1000 (WH)Design certificate (DC)が本年末に出る見込み、またESBWR (GE)DC申請が本年9月に行われる見込み。また3つの既存サイトがNRCEarly Site Permitを申請中。さらに、One-step Licensing手続き実証の予算が2社に対して認可された。

    米国ではユッカマウンテン計画に遅れが出始めていることから、議会のエネルギー・水資源小委員会関係者から、DOEによる中間貯蔵施設建設(3つの既存サイト想定)、研究加速によるAFCI型燃料サイクル導入の可能性、欧州への使用済み燃料輸送と処理委託などの検討の必要性についての声が出始めている。

    カナダでは、2002年廃棄物法で設立されたNWMOが高レベル廃棄物処分方策についての検討を本年11月までにまとめ、政府に勧告。

 

ロシア

    ロシアMayakの再処理工場RT-13系統、設計処理能力400 t/y であるが老朽化で120 t/y のペースでしか処理できていない。2010年までに設備の近代化を計画。

    クラスノヤルスクの使用済燃料能力拡大を計画中(VVER-1000燃料用プールの拡大と乾式貯蔵設備建設)

 

アジア

    韓国では本年3月、廃棄物処分場立地促進法が成立。低レベル廃棄物処分場を受け入れる自治体に3000億ウォン(約300億円)の特別交付金支給。

    中国は9基の原発が稼動しおり、10基が建設中または許認可済み、2020年までに24基建設を計画。

    中国北西地区(蘭州)に建設中の再処理パイロットプラント(25 t/y )は今年完成予定。500トンプールは供用開始済み。

    インドは高速炉実用化に当面大きな力を入れる(500MWe原型炉建設中、2020年までに4基の実用炉)。高速炉の開発要員は約3,000人で、サイクル技術を含めると約5,000人(インド原子力委員会の雇用者総数は約35,000人)。

 

(以上)
 
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核燃料サイクル開発機構
理事
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