送信者: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>
件名 : EEE会議(Re:日本核武装論:Pu爆弾の臨界量について)
日時 : 2003年5月30日 0:15


各位殿

吉岡律夫様ご指摘の標記の件につきましては、先に向山氏からTom Cochran氏の名前
が上がりましたが、偶々今週御殿場で開催されたLLNL主催のAtoms for Peace After
50 Years会議に同氏が出席していましたので直接見解を聴取しました。

1)Fat Man(長崎型:金属Pu6.1 kg, 爆発威力:20 kt)の実績と、ファインマンの
(恐らく、Imploasion条件下での核分裂物質の質量とyieldの概算)評価式(ただ
し、Cochran氏はファインマンのもにょもにょ?式と仰ってたので、いまひとつ不明
ですが)によって外挿すれば、Implosion技術を上・中・下で評価すると、兵器級Pu
質量と爆発威力の関係が導かれるとのこと。
例として:爆発威力(Yield) として1kt*を得るための、最小質量は、
     高性能Implosionの場合:約1kg;
     中性能Implosionの場合:約1.5kg; 
     低性能Implosionの場合:約3kg
になるとのこと。
因みに長崎型爆弾のImplosion技術は‘低’と位置づけています。
1974年にインドが行ったPu爆発実験のImplosion性能も、(自明ですが)‘低’
以上と位置づけられるようです。
*1ktでは約40blocksを破壊する威力があるようです。

2)同様の評価(ある種の外挿)によって、ガンタイプの起爆によるHEUの質量と
Yield(1kt)の関係は:
     高性能起爆で:約2.5 kg
     中性能起爆で:約4 kg
     低性能起爆で:約8 kg
と見積もっています。

3)評価方式(仮定)は分かったが、上記の値にconfidenceはあるのか?と聞きまし
たところ、はっきりとは言っていませんでしたが、ミリタリー筋との情報確認を否定
はしませんでした。ロシアにもそういう話はある・・・というようなことも言ってい
ました。
もっとも米国は、1951年にRangerシリーズと呼ばれる“fractional crit”
weapon designを行い、このシリーズ実験のなかでMark4型爆弾に使用する核分裂物質
の量がPuの場合1〜2kgに削減できるかどうかを試験しているようです。
Cochran氏らの主張は、IAEAのSQ(Pu):8 kgは1/8にすべきであるということ
です。因みに、235U(HEU)の場合は、SQをやはり現行の25kgから約1/8の3kgに
引き下げるべきであるとのこと。

4)Implosion技術に関しても問いましたが、約60年前の米国、約30年前のイン
ドで実現できた技術であることを今日の(各国の)技術レベルから考えるべきだろう
と言っていました。

5)では1/8というファクターの重要性は?ときけば、このコーヒーカップでどれ
くらいか?と、高さ1/2位を指さして、その量の少なさから輸送・取り扱いの容易
さを示唆しておりました。

以上はセッションの合間に個別に聞き出した話です。

5)会議のセッションチェアマンの一人であるJohn Taylor氏は、あるセッションの
なかで、核不拡散の観点からはSQのみをことさら問題にすることはかならずしも良
いやり方ではなく、intrinsic measures(barriers)とextrinsic measures(barriers)
を包括的に評価しなければならないだろうとコメントしていました。

以上、ご参考までに。

澤田哲生(東工大)