EEE会議(放射線の健康リスク評価論を!)
2003/6/16


 各位

放射線の人体への影響については、ほんの微量でも悪影響があるとする直線仮説を
国際放射線防護委員会(ICRP)がこれまでとってきました.しかし毒でも、ある量までは逆に薬になるような効果があることが一般的で、放射線影響でも化学および生物学的に明らかになってきております.
残る問題は、何故ICRPが方針を変えないのかでした。EEE会議の運営委員でリスク波及影響分析研究者の伊藤慶四郎様より以下の情報をいただきました.

(EEE会議代行 天野 治)

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先日、放射線安全規制が及ぼす外部性問題の話をしていた所、その道に通じた人
から、ICRPの線形閾値無し(LNT)仮説、放射線に対する過剰規制の歴史的背景に
は、科学的不確実性問題以外に、原水爆実験をやめさせる上で、放射線影響の恐怖を
できるだけアピールし、国際的な原水爆禁止の価値を共有化する上で都合がよかった
から、誰もその問題点に異議を差し挟まずにきたのだとの、説明を伺いました。

 この点は、UNSCEAR−ICRPの歴史的性格に係わるもので、放射線規制制度の分野で
は、その影響がかなりのタイムラグをもって、原子力平和利用の社会的受容や経済性
にまで大きな影響を及ぼしてきているのが、現実のように思えます。

 しかし、近年の生命科学研究が解き明かしてきた、生体の放射線被ばくに対する驚
異としかいいようのないような多重防護機能の存在、一方、電力市場自由化のもとで
のコスト削減に対する社会的要請の強まり等を勘案した場合、放射線の健康リスクに
関する適切な評価システムの研究開発と、放射線安全規制の合理的な改革に向けた検
討を深め、結果として原子力平和利用の社会的受容性の改善に寄与していくことが可
避化してきているように感じております。

 この点は、AESJ「原子力エネルギーの外部性」研究専門委員会の最重要課題の一つ
でもあり、また、原子力安全委員会の安全目標の知識基盤に係わった問題でもありま
す。かなり時間を要する問題で容易にどうこうできるものではないかも知れません
が、知識化社会を迎え、放射線の健康リスクに関する新たな評価システムの研究開発
の推進と知識基盤の整備面から、アカデミーが担うべき責務には相当重いものがある
ように感じております。

 この分野に通じた皆様から、これらの点に関して、何か、ご示唆いただければ幸で
す。

 取り急ぎ、ご連絡まで。


伊東慶四郎 財団法人 政策科学研究所(IPS)