EEE会議(Re:広島平和記念資料館企画展: 見学者の感想)...........................................2003.8.11
 
先日工藤和彦氏(九州大学教授)から広島平和祈念資料館の特別企画展についてご案内をいただきましたところ、この企画展を実際に見学された澤田哲生氏(東京工業大学)が早速次の通り報告してくださいました。ご参考まで。
--KK
 
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公開シンポジウム『核開発の国際史−核時代の幕開けにおける科学者の社会的責任−』
が、広島の平和記念原爆資料館にて、8月10日(日)に開催され参加しました。
この際、隣接会場における標記ご案内頂いた企画展も覗いてきました。
広島への原爆投下のライブ映像は改めて観ますとその臨場感に鳥肌が立つのを感じま
した。数多くの展示物がありましたが、中でも目を引きつけた2点を紹介いたします。

1)ひとつは、原爆投下直後に現地に赴いた仁科博士をはじめとする調査団らの合同
検討会における、仁科博士直筆のノートです。
このノートの8月10日午後の会合メモに以下のような記述があります。

? 1000〜2000トンノ火薬ニアタル
  火薬デハ熱ナシ 焼夷剤モダメ
  焼夷剤ヲマキ コレニ火ヲツケル
  原子弾又ハ同程度ノモノ

この後、会合の結論として同展示の表題でもある『原爆ナリト認ム』が合意されたと
のことです。

2)もうひとつは、仁科博士が広島原爆投下直後に調査に向かう直前の昭和二十年八
月七日夜に、仁科研の玉木英夫博士に宛てた置き手紙の文面です。

  玉木君
  今度ノトルーマン声明ガ事実トスレバ吾々「ニ」号研究ノ関係者ハ文字通リ腹ヲ
切ル時ガ来タト思ウ。ソノ時期ニツイテハ広島カラ帰ッテ話ヲスルカラ、ソレ迄東京
デ待機シテ居ッテ呉レ給ヘ・・・・

ここでいう“「ニ」号研究”とは、当時の陸軍主導の原爆開発プログラムで、二号の
二は仁科博士の仁に因んだ呼び名です(海軍による原爆開発は“F号研究”と呼ばれ
ていました。Fはfissionのfです)。“腹ヲ切ル時ガ来タト思ウ”の一言は、ごく単
純にその文脈からすれば、陸軍プログラムを成功させられずに米国に先を越されたこ
とへの責任の取り方を言ったことと思えますが、当時既に日本の資源(核分裂物質、
人員、工業力など)からは、到底原爆を製作することは能わないと認識されたいたの
も事実ですから、話はそう簡単では無いと思います。

シンポジウム『核開発の国際史』についても、興味深い発表がありましたので、追っ
て報告します。

東工大
澤田哲生

on 03.8.8 10:14 AM, Kumao KANEKO at kkaneko@eeecom.jp wrote:

> 皆様
>
> ヒロシマ原爆記念日にちなんだ、次のような企画展のご案内を、工藤和彦氏(九州大
> 学教授、日本原子力学会原子力教育研究特別専門委員会主査)からいただきました。
>  仁科浩二郎先生(愛知淑徳大学教授、故仁科芳雄博士のご令息)からのご連絡によ
> るものだそうです。 大変立派な企画だと思いますので、ご都合のつく方は是非お出
> かけください。
> (添付ファイルに入っている企画展のビラがやや大きくて気になりますが、内容が詳
> しいので入れさせていただきました。悪しからず。)
>
> 金子熊夫
>
> ***************************************************
>>
>> 広島平和記念資料館 平成15年度第1回企画展
>> (〜原爆投下後に行われた被爆調査の軌跡を追う〜
>>   原子爆弾ナリト認ム)」 のご案内
>>
>>             原子力学会原子力教育研究特別専門委員会
>>                    主査 工藤和彦(九州大学)
>> 前略
>>  今年の広島市平和記念資料館における原爆関連展示では、今迄と一味
>> 違った企画展(科学的な事実と関連資料を重視した企画)が7月25日
>> から始まっております。「第1回企画展:被曝調査の軌跡を追う。
>> 原子爆弾ナリト認ム」というタイトルです。
>>
>>  詳しくは添付資料の本企画展のパンフレットをご覧ください。
>>
>>  爆撃直後の科学者達の調査、敗戦後における理研、京大、東大研究者
>> の理学/医学調査と、それに用いた検出器の実物、アメリカから返還さ
>> れたフィルム、検出原理の解説の為のウィルソンの霧箱の動作実演、な
>> どがあります。来館した子供たちもこのような科学的な展示物に相当の
>> 関心を持って見ているそうです。
>>
>>  いつもは、原爆の日の前後に市民の関心がピークに達し、それが過ぎ
>> るとあとは別の話題に関心が移る、というパターンですが、このような
>> 企画展を通して多少とも、持続性のある考察へ変貌して貰いたいもので
>> す。
>>
>>  今迄になく長期間、5ヶ月間の展示で、原爆の日(8月6日)と、8
>> 月15日終戦記念日を経過しますので、これからこの科学的展示資料の
>> 受け取られ方を注視するチャンスでもあります。
>>
>>  EEE会員各位におかれましては、機会がありましたらこの企画展をご
>> らんになっていただきたく、ご案内申し上げます。
>>
>>  なお、この案内は仁科浩二郎先生(愛知淑徳大学教授:仁科芳雄先生
>> のご令息(工藤注))からいただいた連絡を基に作成いたしました。
>>                            草々
>>
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>> 工藤 和彦
>> 九州大学大学院工学研究院
>> エネルギー量子工学部門
>> kudo@nucl.kyushu-u.ac.jp
>> TEL&FAX 092-642-3791
>> 〒812-8581
>> 福岡市東区箱崎6-10-1
>> ------------------------
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